頬を染めるのは、イルミネーションのせいだけではないのです

 コンビニの雑誌コーナーに足を向ける。特段欲しい雑誌があるわけではなかったのだけれど、どの雑誌もクリスマスのイルミネーションスポットの特集が組まれていて、その素敵な写真に、気が付けば一冊の雑誌を手にしていた。


「きれい…」


 各地のイルミネーションの写真や、クリスマスイベントの情報など、もし恋人がいたら、わくわくどきどきしながらこの雑誌を見ていたのかな、なんて思いを馳せる。


「「はぁ…」」


 思わず零れたため息が、どこかの誰かと重なった。

 驚いて雑誌から顔を上げると、隣に同じように暗い表情をした冬月くんが立っていた。


「ふ、冬月くん!?」

「あ、白雪さん。こんにちは」

「こ、こ、こんにちは!」


 まさかこんなところで会えるとは思っていなかったので、完全に気を抜いていた。

 図書委員の当番の時は、それ相応の心の準備をして彼に会うので、まだなんとか平静を保てていた。しかし今日は不意打ちすぎる。心の準備が全くできていない。

 あれ?冬月くん今、ため息をついていた?

 私がため息をついたタイミングで、彼も同じようにため息をついていたように思う。何かあったのだろうか?そういえば表情もどことなく暗いような?


「冬月くん、なにかありましたか?ため息をついていたように思いますが」


 不躾な質問すぎただろうか…と、少し反省する。私なんかに、ため息の理由なんて聞かれたくないかもしれない。


「え?ああ、ごめん。出ちゃってたか」


 冬月くんは少し寂しそうに眉を下げると、こう言った。


「街があまりにクリスマスで、少し疲弊してた」

「え?クリスマス、お嫌いなのですか?」

「いや、そういうわけじゃないけど。ついさっき友達にクリスマス遊ばないか、って声を掛けたら、彼女と過ごすから、って断られた」


 ん?冬月くんはお友達とクリスマスを過ごしたかったのかな?


「彼女と過ごすのでは、だめなのですか?」

「ん?」

「え?」


 私と冬月くんは二人して同じようにきょとんとした顔で見つめ合う。

 あれ?私、やっぱり失礼なこと言った?

 冬月くんは苦笑すると、私にこう言った。


「白雪さん、なにか誤解してない?俺、彼女いないけど」

「!?」

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