異世界に転生したら溺愛ロマンスが待っていました! 黒髪&黒目というだけで? 皇太子もエルフもみんなこの世界"好き"のハードル低すぎませんか? ~これサダシリーズ3【これぞ雨降って地固まる】~
第2話 私は油断などしない
【第2話 私は油断などしない(セフィロス視点)】
星渡りの民って、予想していたのと違ったな。
もっと落ち着いた聖女のような感じかと想像していたのに。
あれで五人も子どもを持つ母親だって?
小柄で幼顔のせいか、子どもたちがいなかったら、とてもじゃないがそんな風には見えない。
かつて麗人谷にいた星渡りの民もそうだったんだろうか……。
「ねぇ、ギルバロス?」
薬の調合をしている背中に話しかけると、その手がぴた、と止まった。
『知らん……。俺にはわからん……』
「ねぇ、ギルバロス、ちゃんと声で返してくれよ。
君、声に出してちゃんと喋ったのいつぶりだよ?
そのうちしゃべり方を忘れてしまうよ?」
『そんなわけないだろ。それに、俺に話す相手などいない』
「私がいるよ~。君が声に出して話してくれないと、ひとり言を言っているみたいに見えるからほんと嫌なんだよ~?」
『それは……、それはすまなく思うが……。だが、俺たちの間では必ずしも必要ではないだろ』
「はあ~……。君のその内向的な性格どうやったら治せるんだろうなぁ」
それにしても……。
君の呪い蜂はうまくいったね。
星渡りの民をまんまと麗人谷に呼びよせることに成功したよ。
後は、頃合いを見て子どもたちを回復させ、取引を持ち掛ける。
あの落日の獣人だけは予定外だったけど。
ギルバロスがしばらく停止していた手をやがてゆっくり再開し、薬草を摺る音だけが部屋に響いている。
『……黒水晶の噴水の水を与え続けていたというのは、正しい処置だった……。
助言したエマというのは、たしかハマル国にいた前に星渡りの民。
死んだはずなのに、なぜ助言ができたんだ……』
私もそれを不思議に思ったよ。