薔薇色狂想曲
その背中に、声をかける。

「……待てよ、拓実。

いいんじゃね?
まだ、拓実の中では後悔してるのかもしれないけど。

最悪の事態にはならないで済んだんだ。


……それに。

今、拓実と理名ちゃんが、お互い現実を受け入れて、前に進めているのなら。

それでいいんじゃないか、って思う。

いつまでも後悔してると、それがいつか拓実と理名ちゃんの足枷になる気がする。

無理にとは言わないけど、後悔の念は早く捨てたほうがいいと思うぜ」

「そうしてみるよ。
ありがたいアドバイスありがとうな。

俺こそ、謝らないとな。

理名がキツいこと言ったろ。

何か今のお前ら、昔の俺たちとか、昔の麗眞と椎菜ちゃんにそっくりなんだ。

コミュニケーション不足は限界迎えるの早いぜ。

頑張れしか言えないのが、心苦しいけどな」

幾分か、数分前より気持ちが晴れたのだろう。

拓実は今度こそ、背中をしゃんとさせて病院の廊下を歩いて行った。


今日はいい日になりそうだ。

貴重なお昼ごはんが救急車のサイレンで中断されるまでは、そう思っていた。


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