薔薇色狂想曲
無事に家に戻ると、クルーズ船への招待状を見て碧ははしゃいでいた。

「久しぶりに皆に会えるの、嬉しい!
成司も行くよね?

成司にも来てほしいって」

碧は、途中で正瞭賢高等学園(せいりょうけんこうとうがくえん)からは退学した。

喘息の発作で休みすぎて、単位が取れなくなったのだ。

それからは、正瞭賢高等学園での単位は引き継いだ状態で、通信制高校に通った。

昔の仲間と会えるのは、彼女にとっては嬉しいだろう。

……俺は、理名ちゃんや深月ちゃん、碧の主治医の理名ちゃんを筆頭に、毎日顔を合わせるのだが。

「楽しみだなぁ。
屋台を楽しめないのはちょっと残念だけど。

久しぶりに学生時代の仲間に会えるんだもん。

もう、理名と拓実くん、琥珀(こはく)(たつみ)くん以外は夫婦だもんね。

皆それぞれ忙しくてあまりゆっくり話す機会もないし。

人混みを避けて5000発の花火見れるなら最高だな」

そう言って、碧は鞄の中から何かを取り出して、俺に渡した。

1冊の分厚い日記帳だった。

『3年日記』

表紙には、そう書かれている。

あとは3年分の西暦しか書かれていない、シンプルな表紙のもの。
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