ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
「決まり」

 篠井くんが片手をあげた。

「?」

「知らねぇのか。ハイタッチ」

「!」

 ハ、ハイタッチ! 初めてかも!
 私はドキドキしながら、篠井くんの手に自分の手をトン、と置いた。

「ブハッ」

 篠井くんが噴きだして無邪気に笑った。
 わ、篠井くん、こんな風に笑うんだ……!

「ハイタッチはこうやってやんだよ。へい」

 篠井くんは私の右手をあげて宙にとどめさせると、そこに自分の手のひらを打ち込んでパンッ!と小気味いい音を鳴らした。

「……!」
 
 ビリビリッと電気が走った手のひらから、うずうず、ワクワクが体中に広がっていく。
 これから何かが変わっていく、始まっていくんだって予感に、胸が震えた。
 篠井くんの嬉しそうな顔から、私と同じ気持ちでいてくれてることがわかって、嬉しくて自然と口角が上がった。

「そうと決まればスパルタで行くからな」

「は、はい……!」

「目指すは世界!」

「へ」

 おおげさな主語に間抜けな声をもらした私を、篠井くんは流し目で見ながらニッと笑う。

「世界、取りにいくぞ」

 こうして私たちの、世界を変える戦いが始まった。
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