両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 挨拶をしようとソファから立ち上がった私は、入って来た人物を見て目を見開いた。
 なんでこの人がここに……?と言葉に詰まる。
「お待たせしました」
 そう言って入って来たのは、先日パーティーで声をかけて来た男性だった。たしか、翔真さんの同級生と言っていた。
 彼は飯島製作所の方だったんだ。だから、あのパーティーにも関係者として参加していたんだ……と納得する。
「本日は、お時間をいただきありがとうございます」
 今日は仕事で来てるんだからと気持ちを切り替え頭を下げる。
「どうして翔真の嫁がここに? 担当は藤沢さんって名前だったはずだけど」
「失礼しました。職場では旧姓のまま働いていまして。広報部の藤沢彩菜と申します」
 説明しながら名刺を差し出す。
 受け取った彼は、「なるほど」とつぶやきながら私を見た。足先から頭まで値踏みされるような視線を向けられ、居心地が悪くなる。
「総務の飯島です」
 差し出された名刺には飯島信也と書かれていた。社長と同じく飯島という名字だから、きっと社長のご子息なんだろう。
「本日は弊社の記念誌制作にご協力をお願いしたく……」
 本題を切り出そうとした私に、飯島さんは大きくため息をついた。
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