両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 不安そうな彼にうなずく。迎えに来てくれるのを待つんじゃなく、自分から彼のもとへ帰りたかった。
「はい。すぐに帰るので待っていてください」
 力強く言って電話を切る。
 部屋の中がしんと静まり、ご両親が同時にため息を吐き出した。
「もう、なんだかドラマチックね! 聞いていてきゅんとしちゃった」と頬を染めてはしゃぐお義母様と、「あの翔真がこんな必死になるところを初めて見たなぁ」と楽し気に笑うお義父様。
 ご両親の前でなんてやり取りをしていたんだろうと我に返り、一気に頬が熱くなった。
「お騒がせした上に、変なところを見せてすみません……っ」
 いたたまれなくて、頭を深く下げて謝る。
「いいのよ。いつも真面目で遠慮がちだった翔真の素が見れて、うれしかったから」
「ふたりの間でなにか誤解があったみたいだね」
 お義父様とお義母様は優しい表情で私を見た。
「翔真は不器用で甘え下手な息子だけど、ちゃんと向き合ってあげてくれるかい?」
「それから、私たちの言葉も伝えてくれる? 翔真はちゃんと望まれて生まれ愛されて育ってきたって」
「はい。わかりました」
 涙をこらえながらうなずく。そんな私の背中をお義母様が優しくなでてくれた。
 

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