魔法の手~上司の彼には大きな秘密がありました!身も心も癒されたい~
孫?
お兄さん?
カチャリと診療室のドアが開いたのは分かる。
「円生ちゃん、陸ときちんと話した方が良い」
うつ伏せの私は大先生の言葉に頷くと彼と施術を代わったのが分かった。
「ねぇお兄さんて?」
「あぁ、2年前に癌で亡くなったんだ。梓乃は兄貴の元嫁さん」
彼がゆっくりと肩を解して行く。
「元カノは本当だよ。付き合ってすぐ兄貴に奪われたけどな」
ケラケラ笑いながら昔を懐かしんでる。
「家柄がうちとでは違い過ぎて反対を押し切って兄貴と梓乃は結婚したんだ。その後…翔が産まれた」
私の肩から腕に彼の手はゆっくり移動していく。
その手が今日はいつもより優しい。
いつもは痛いと感じるくらい施術に力を入れるのに今日は少し違う。
「翔が3歳の時に兄貴が亡くなって梓乃と翔は実家に連れ戻されたんだ。まあ、じいさんが連絡したからだけどな」
大先生は今後いや先の未来を考えて梓乃さんを説得したんだろう。
「二人を頼むって…兄貴が俺に残した最後の願いだったんだよ。」
「そうなんだね…」切なくてそうとしか言えない。
「あのフルール・ド・リスの家柄考えると公に出来なかったから何も言えなくて」
いつ診療室に入って来たのか分からないけど近づく足音が聞こえる。
「ワシが誰にも言うなって釘をさしたんじゃよ。まさか円生ちゃんにまで言わないとは思わなんだ」
大先生は「はははっ」と笑いパチンと彼を叩く音とカルテか何かをパサっと置いた音をさせてまた足音が遠ざかった。
「簡単に言える話じゃなくてごめんな。さすがにこの間うちに来た時、梓乃に相談したんだ」
この間…
私と桜子が勘違いした時だと思う。
「え、真宮さんに私達の話したの?!」
これから仕事上付き合う相手に話をされたと知り驚いてうつ伏せだった身体をクルッと回転させ上向きになった。
「だって翔の事を俺の子だと勘違いしたままだっただろ?」
何も知らなければ私は誤解を続けたまま間宮さんと彼の間に隠し子が居ると思ってたはず。
「俺だって幸せになる権利はある」
「幸せ?」
「円生と会って施術するのが楽しくて」
あれはただの意地悪だったんじゃないかな?
今日は痛くされては無いけどいつもならこう…
「痛ッ!!何で急に痛くすんのぉぉぉぉ!」
上向きになった私の鎖骨から腕に掛けてツボを刺激する。
「円生の悶絶する顔が可愛い過ぎる!涙流すし」
やっぱりただの意地悪じゃないか!!
今日も涙目になった私は彼を軽く睨む。
それにもめげない彼は笑いながらとんでもない話を口にした。
「俺、仕事辞めるから」
睨んだ私をあざ笑うようにまた聞いてない話を平然と話し出す。
「藤乃屋継ぐ」
仕事を辞める。
優秀な外商営業だけど藤乃屋も似合ってる気がする。
「後悔はしない?」
「するわけない。」
私の専属じゃなくなるのかと少し寂しい気持ちになってしまうのは私の欲かも知れない。
彼とここで出会って付き合う事が出来た。
それだけで十分なのに…
「そんな寂しそうな顔するな」
私の左手を掴んで無造作にポケットからフルール・ド・リスのパープルの箱を取り出して、
「最大級のマーキング。円生は困るくらい隙があるから」
と笑い指輪を取り出し左手の薬指に嵌めてくれた。
「イミテーション?」
「はぁ?本物だろ」
「ゴミ箱にポイッと…」
「お前ホント冷たい」
キラッと光るプラチナリングは真宮さんに売りつけられたらしい。
「円生は合コンも行くしなぁ」
「行かないわよ」
「油断ならない」と言いながら唇に優しいキスをした。
私の専属施術師は近い将来伴侶になる。
痛い施術の後にこんな甘くしてくれるなら悶絶するのも悪くないかも知れない。
ーーそう思ったのは私の秘密。
お兄さん?
カチャリと診療室のドアが開いたのは分かる。
「円生ちゃん、陸ときちんと話した方が良い」
うつ伏せの私は大先生の言葉に頷くと彼と施術を代わったのが分かった。
「ねぇお兄さんて?」
「あぁ、2年前に癌で亡くなったんだ。梓乃は兄貴の元嫁さん」
彼がゆっくりと肩を解して行く。
「元カノは本当だよ。付き合ってすぐ兄貴に奪われたけどな」
ケラケラ笑いながら昔を懐かしんでる。
「家柄がうちとでは違い過ぎて反対を押し切って兄貴と梓乃は結婚したんだ。その後…翔が産まれた」
私の肩から腕に彼の手はゆっくり移動していく。
その手が今日はいつもより優しい。
いつもは痛いと感じるくらい施術に力を入れるのに今日は少し違う。
「翔が3歳の時に兄貴が亡くなって梓乃と翔は実家に連れ戻されたんだ。まあ、じいさんが連絡したからだけどな」
大先生は今後いや先の未来を考えて梓乃さんを説得したんだろう。
「二人を頼むって…兄貴が俺に残した最後の願いだったんだよ。」
「そうなんだね…」切なくてそうとしか言えない。
「あのフルール・ド・リスの家柄考えると公に出来なかったから何も言えなくて」
いつ診療室に入って来たのか分からないけど近づく足音が聞こえる。
「ワシが誰にも言うなって釘をさしたんじゃよ。まさか円生ちゃんにまで言わないとは思わなんだ」
大先生は「はははっ」と笑いパチンと彼を叩く音とカルテか何かをパサっと置いた音をさせてまた足音が遠ざかった。
「簡単に言える話じゃなくてごめんな。さすがにこの間うちに来た時、梓乃に相談したんだ」
この間…
私と桜子が勘違いした時だと思う。
「え、真宮さんに私達の話したの?!」
これから仕事上付き合う相手に話をされたと知り驚いてうつ伏せだった身体をクルッと回転させ上向きになった。
「だって翔の事を俺の子だと勘違いしたままだっただろ?」
何も知らなければ私は誤解を続けたまま間宮さんと彼の間に隠し子が居ると思ってたはず。
「俺だって幸せになる権利はある」
「幸せ?」
「円生と会って施術するのが楽しくて」
あれはただの意地悪だったんじゃないかな?
今日は痛くされては無いけどいつもならこう…
「痛ッ!!何で急に痛くすんのぉぉぉぉ!」
上向きになった私の鎖骨から腕に掛けてツボを刺激する。
「円生の悶絶する顔が可愛い過ぎる!涙流すし」
やっぱりただの意地悪じゃないか!!
今日も涙目になった私は彼を軽く睨む。
それにもめげない彼は笑いながらとんでもない話を口にした。
「俺、仕事辞めるから」
睨んだ私をあざ笑うようにまた聞いてない話を平然と話し出す。
「藤乃屋継ぐ」
仕事を辞める。
優秀な外商営業だけど藤乃屋も似合ってる気がする。
「後悔はしない?」
「するわけない。」
私の専属じゃなくなるのかと少し寂しい気持ちになってしまうのは私の欲かも知れない。
彼とここで出会って付き合う事が出来た。
それだけで十分なのに…
「そんな寂しそうな顔するな」
私の左手を掴んで無造作にポケットからフルール・ド・リスのパープルの箱を取り出して、
「最大級のマーキング。円生は困るくらい隙があるから」
と笑い指輪を取り出し左手の薬指に嵌めてくれた。
「イミテーション?」
「はぁ?本物だろ」
「ゴミ箱にポイッと…」
「お前ホント冷たい」
キラッと光るプラチナリングは真宮さんに売りつけられたらしい。
「円生は合コンも行くしなぁ」
「行かないわよ」
「油断ならない」と言いながら唇に優しいキスをした。
私の専属施術師は近い将来伴侶になる。
痛い施術の後にこんな甘くしてくれるなら悶絶するのも悪くないかも知れない。
ーーそう思ったのは私の秘密。