甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
朱音さんは、社長から逃げたいのだろう。だが、逃してもらえそうになくて抗っている最中と私は思っている。
私は…どうしたいんだろう。
母のように愛するあまり、束縛し、執着して、彼しか見えなくなりそうだから、嫌いだ、嫌いだと抗ってきたが、愛される喜びを教えられた身体は、もう、彼の指先だけで期待する。
束縛し、執着しだして嫌われるくらいなら、上司と部下の距離感が丁度よかったのに。
なぜ、不感症だから途中で諦めると決めつけてしまったのだろうか?
あの時の自分の浅はかさが悔やまれるが、今更なのだ。
これから私は、彼との距離感を考えると頭を悩ませるのだった。
悩んでいたのに、そんなのは一瞬で、私は自分の企画した案件に追われ忙しい日々を過ごしていた。
腰痛で動き回れない間、リストアップしていたメディアに取り上げられるような候補店にアポを取り、出店者側に向けた資料作成に時間を割いた。動けるようになったら、メディア露出を避けているお店に出向き、自分の味覚で味を確認して、出店してもらえるようお願いしに回った。そんなお店は一度で頷いてくれるはずもなく、難航していたが、なんとか、口説き、残り1店舗のみを残すまできた。