ずっと君の傍にいたい 〜幼馴染み俳優の甘い檻〜

Prolog

 見慣れた公園に、どこまでも続く青空。
 緩やかな風が吹き、樹々がさわさわと心地よい音を奏でている。
 遊具の前には数人の小学生男子がおり、一人の少年をぐるりと取り囲んでいた。

『ちょっと、何してるの!』

 そこにいつも紗耶(さや)が割って入り、彼を助けるのが常だった。

『やべ、白川(しらかわ)が来たぞ。逃げろー!』

 一人の少年が大声を出したのを合図に、円になっていた少年たちは、わいわいと声を上げながら散り散りに走っていく。

 少年の周りにいた同級生たちが誰もいなくなった公園には、紗耶と少年──(みやび)しかいない。
 背後から遠慮がちに服の裾を引っ張られるのもお約束だった。

『紗耶、いつもごめんね。……ありがとう』

 今にも泣き出しそうな潤んだ瞳で紗耶を見上げる雅は、そこらにいる同級生の女子よりも可愛らしい。
 緩くウェーブのかった黒髪に、小学校高学年にしては丸く大きな瞳を持つ雅は見る者を惹き付ける。

『ううん、何もなくてよかった』

 裾を引っ張る手を取り、両手でしっかりと握り締める。
 自分よりも少し小さくて、気弱でけれど優しくて──紗耶が守ってあげたいと思う男の子が雅だった。

 それが恋なのか、はたまた親愛としての感情なのか今の紗耶には分からない。
 しかし、そこには紛れもない『何か』があった。

『またあいつらにいじめられたら私を呼んで。すぐに雅の所に行くから』

 そう言った後の彼の表情は、この世の何よりも美しく愛おしいと思えた。
 今でも鮮明に覚えている、紗耶の心の中にある大切な思い出だ。
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