甘く愛されて大人になる。 ハイスペックな幼馴染との結婚ごっこ
1.言えない本音

1.言えない本音

○謙人と帆音の家:休日のリビング

帆音モノローグ:昔、テレビで聞いたのを、今でも覚えてる

柔らかくも真剣な顔で、帆音に伝える謙人

謙人「帆音、お父さんね、結婚を考えている人がいるんだ」

言葉を失う帆音
とても謙人の顔は見られない。
固い、だけど今にも泣き出しそうな切迫感が漂う無表情。

帆音「結婚…」

帆音モノローグ:結婚する2人は
婚姻届を出し
今までの戸籍を抜けて、
2人で新たな戸籍を作るのだとか

謙人、真っ直ぐに、だけど柔らかい声で、微笑みながら帆音を見つめて話す

謙人「帆音も無事推薦が決まったし、少し落ち着いたから紹介したくてね」

帆音(お父さんも、新しい戸籍を作るということなんだろうか…。)

謙人の目を見れない帆音は、目を伏せて考える
帆音(今の家族を抜けて…)
帆音モノ:グラグラする

帆音、ぐっと手を握る
帆音(ここはきっと、笑顔で祝福するところ)

帆音、口角をぐっと上げて、笑顔の表情をつくろうとする

帆音モノ:足元が崩れてグラグラする

帆音は、涙がこぼれ落ちないように、ゆっくりと目を見開いて不自然に、笑う。

帆音「おめでとう。お父さん」

○橙和の部屋

ソファに座る帆音とその向かいにあるベッドに寝転ぶ橙和。
制服を着た2人。
学校帰り、橙和の家に寄った帆音。

橙和「再婚?」

帆音「うん」

橙和「大丈夫?」

帆音「…うん」

無表情で、そっぽを向く帆音。
それを見て、やれやれという感じで、ため息混じりに優しく帆音を見つめる橙和

橙和が、帆音の隣に座り、
頭を、ポンポンと撫でる。

橙和「ほんとは
寂しくてたまらないんでしょ」

顔を覗き込むようにして言う橙和。

橙和の言葉で、帆音の顔が歪む。
目から涙がポロリと落ちる

帆音「寂しいっていうか…」

帆音モノ:怖い

帆音「私、ひとりになっちゃう…」

帆音モノ:安全な場所が崩れていくような感覚

ポロポロと泣く帆音。

帆音「結婚ってさ、2人で新しい戸籍を作るんだって。それまでの家族を抜けて。お父さんが結婚相手と新しく家族を作るなら…私は1人になっちゃう」

橙和「へぇ」
口元に手を当てて考える橙和
橙和(でも再婚なら確か…抜けるんじゃなくて…)

橙和が、泣いている帆音の頭を、よしよしと優しく撫でる

橙和「でも、家族じゃん。
帆音と帆音のお父さんだって。
法律の話ではってだけでしょ」

帆音「橙和には分かんないよ。
私とお父さんの間には、それしかないよ。
戸籍の上での繋がりがなくなったら、
もう、親子じゃないよ…」

眉間に皺を寄せて、目を伏せ、
苦しそうに泣く帆音

帆音モノ:私は、お父さんの娘じゃないから。

泣いている帆音を、
橙和がぎゅっと抱きしめる

帆音「ちょ、っと何…?」

橙和「じゃあさ、俺と結婚する?
俺と新しい戸籍を作って、家族になろうよ。
俺が帆音とずーっと一緒にいてあげるよ」

優しく、色っぽく微笑む橙和

帆音「は…?!何言ってるの?!」

橙和からとっさに離れる帆音。
びっくりして赤くなっている。

橙和「帆音だって家族を作ればいいんだよ。」

帆音の頬に手で触れて、
見つめながら話す橙和

橙和の真剣な眼差しに
帆音はドキッとして目を逸らし

帆音「からかわないでよ!第一、私は18だから結婚できるけど、橙和はまだ17だからできないでしょ!結婚」

きょとんとする橙和。

帆音モノ:マンションの隣に住んでいる橙和は、17歳、高校2年生。
高3の私の1コ下の幼馴染。

小学生の時、
ここで私がお父さんと2人で暮らすようになってからの、付き合いだ。

大人っぽくて、顔が良くて、勉強も運動もできて、優しい。何でもできる男の子。もちろんモテる。

帆音(頼りになる弟がいたら、こんな感じかな…)
橙和を横目で見る帆音

橙和「逆に、年齢がクリアできたらしてくれるんだ?結婚」

いたずらな表情で顔を近づけてくる橙和。

帆音「そういう意味じゃなくて!」

困ったように顔をそらす帆音。

橙和「フフッ帆音、顔赤いよ」

帆音「からかうからでしょ!」

帆音モノ:橙和は最近、
色恋ネタでたまに私をからかうようになった。

帆音(昔は可愛かったんだけどなぁ)

橙和「俺、本気だけど。」

赤くなり困り顔の帆音
帆音(慣れないんだよなぁ、こういう話題)

ヴヴッ
スマホが鳴る

スマホを確認する橙和。

橙和「仕事の電話だ。ちょっと返すね」

パソコンやキーボードの機材が並ぶデスクに座って、何か確認したり入力したりする橙和。
それを見つめる帆音。

帆音モノ:橙和は、学生の傍ら音楽を作って配信し、仕事として活動もしている。

橙和の言葉を思い出す帆音(回想)
橙和「俺、割となんでもできちゃうけど、
音楽だけはむずいんだよね」

帆音モノ:そう言って嬉しそうに笑う橙和は、
年下だけど私なんかより余程大人に見えた。(回想終わり)

パソコンの前で電話をする橙和の横顔を見つめる帆音。

橙和のパソコンの画面に映る文章「ABCレーベル ウエディングソング コンペ」

帆音(橙和はすごいなぁ)

切なげにため息をつく帆音

帆音「(私もお父さん離れをしないとな…)」

(回想)
橙和「帆音だって家族を作ればいいんだよ。」
(回想終)

さっきの橙和の言葉を思い出す帆音。
帆音(新しい家族…)

○帆音回想:公園

若き帆音ママ:「帆音、お父さんが欲しいって言ってたでしょ。今日からこの人が帆音のお父さんだからね」

対面する謙人と帆音ママ、帆音。

5歳の帆音、ママの腕に隠れるようにしながら、恐る恐る謙人を見上げる。

帆音の背丈に合わせてしゃがむ謙人
柔らかな、満面の笑みで帆音を見つめる

謙人「君が、帆音ちゃんか。
僕を帆音ちゃんの
お父さんにしてくれませんか?」

緊張しながらも、
嬉しさの光が宿る5歳の帆音の瞳

帆音「…うん」

帆音モノ:5歳の冬、母が再婚して、お父さんは私のお父さんになった。

○帆音回想:家での思い出

料理姿の笑顔の謙人
謙人「今日はハンバーグ〜!」

きゃはっと笑う謙人
謙人「帆音ちゃん見て!キティちゃん弁当〜!」

帆音モノ:仕事ばかりのお母さんに比べて
お父さんは家庭的だった。

嬉しそうに微笑む小さな帆音
帆音「お父さん」

謙人「帆音〜!」
帆音を抱き寄せる謙人。
幸せな2人の笑顔。

帆音モノ:私はお父さんが大好きになった

○帆音回想:夜のリビング

帆音ママ「それなら、あなたが育てればいいじゃない…!」

謙人「もちろん育てるけど、
君だってもっと帆音ちゃんを…」

帆音ママ「帆音帆音って、うるさいっ!
忙しいのよ。私は子育てとか家庭とか向いてないの。もううんざりなの…!」

2人の言い合いを、ドアの影から見てしまうパジャマ姿の帆音。ショックを受けた表情。

○帆音回想:家の玄関

帆音モノ:小2の冬、2人は離婚をして、
お母さんが出て行った。

帆音母が出て行く姿を見送る、帆音と謙人

帆音と目線を合わせて、
頭を撫でながら謙人が話す

謙人「帆音、お父さんと2人で暮らそうな。
僕たちは家族だから」

静かに泣きながら、
帆音はコクンと頷いた。

帆音モノ:ずっと、お父さんは温かく私を育ててくれた。血の繋がりはないけれど、
お父さんと私は、まぎれもなく親子で家族だった。
(回想終わり)

○橙和の家、リビング

憂いを帯びた帆音の表情
帆音(そう、思っていたんだけどな)

橙和「俺も一緒に行こうか?」

帆音「え? 」

橙和「再婚相手との顔合わせ。
ひとりじゃ心細いでしょ?」

帆音「いいのかな。」

橙和「いいでしょ。
俺、大事な幼馴染だし」

帆音「弟みたいなね」
表情が和らいで、
ふふっと笑う帆音。

橙和の表情が歪む。

橙和「弟じゃないし。俺のが背高いし。足速いし。頭いいし。帆音の勉強も教えられるし」

ぐいぐいと帆音に詰め寄る橙和。ソファの片側に追い詰められる帆音。

帆音「あはは。ごめんって。いつもありがと」

帆音の前髪あたりを撫でる橙和。

切な気な表情をした橙和と目が合う帆音。
ドキッとして焦る帆音。

帆音「何?なんかついてる?!」

橙和「…鼻毛がでてる」

聞くなり鼻を手で塞ぐ帆音。
帆音「えっ?!」

橙和「なんてね。」
ニヤニヤと笑う橙和

帆音「ちょっともう!からかわないでよ!」

橙和「あはは」

○帆音の家、リビング

謙人「帆音おかえり。お隣行ってたの?」

帆音「うん。煮物貰ったよ」

持っている手提げを謙人に渡す帆音。
手提げの中のタッパーを覗く謙人。

謙人「わ、美味しそう。
橙和くんて本当優秀。
イケメンだし。頭いいし、優しいし。
料理も出来て。婿に欲しいわ〜」

帆音:(お父さんさんまで何言ってんだか)

帆音「お父さんも料理上手でイケメンじゃん」

謙人「え、何嬉しいんだけど。
お小遣いほしいとか?」

帆音「くれるなら欲しい」

笑顔になる謙人

謙人「あげるか〜!」

楽しそうに笑う帆音。

帆音「(良かった、普通に話せる)」

○帆音の部屋

自分のベッドに座り、壁にもたれかかる帆音。
耳にはイヤホン。
スマホ画面はミュージック画面で
towaの曲「春を唄う」
穏やかな表情で橙和の曲を聴く帆音。

帆音:(橙和と話したら
少し冷静になれたな…)

スマホの画面に橙和からのメッセージのポップアップ通知が出る。
橙和メッセージ「あれから大丈夫?」

メッセージに気づく帆音。
それを読んだ帆音は、
スマホを持った手を胸に当てて、深呼吸する

帆音「…よし。頑張れ私」

スマホの画面に映るメッセージのやり取り
橙和メッセージ「あれから大丈夫?」

帆音メッセージ
「うん」 
「さっきはありがと」
「やっぱ頼みたい」
「顔合わせ、一緒に挑んでくれない?」

橙和メッセージ「了解」

○橙和の部屋
スマホの画面に映る帆音とのメッセージのやりとり

スマホを手に、無言で静かに、何か考えている橙和の顔
 
○帆音の家のリビング

帆音モノ:ついにこの日が来てしまった

固い、青ざめた表情でテーブルに座る帆音
帆音のそばに来て声をかける橙和

橙和「大丈夫?」

帆音は、青ざめて、力なく笑う

帆音「うん…。
お父さんが幸せになれるって言うのに、
不安になって…大げさだよね」

必死に笑顔を作る帆音。

帆音のほっぺをぐいっとつねる橙和

帆音「いひゃい…」

何すんのよって顔で橙和を見つめる帆音

「帆音が泣いたら、俺が助けてあげるよ」
得意げに、笑顔を浮かべる橙和。

その言葉に、ホッとして笑顔になる帆音。
「橙和って本当頼りになる」

その言葉に、赤くなる橙和
帆音「…ん?橙和?」
橙和が赤くなっていることが珍しくて
覗き込む帆音。

橙和が今度は帆音の両ほっぺをぐいっとつねる。

「いひゃいいひゃい、ちょっと!」

ピンポーンとチャイムが鳴る

帆音「来た…」

青ざめる帆音と無表情の橙和

謙人「帆音、帰ったよ〜」
相手を迎えに行った謙人の声。

緊張の面持ちの帆音。
リビングのドアが開く。

ガチャ…。

あかり「ほのちゃん!はじめまして!
三倉あかりです!」

入るなり明るく大きな声で名乗り、
勢いよく礼をするあかり。

帆音は、上手く目を合わせられない。
帆音「あ…はい。えっと、帆音です。よろしくお願いします…」

帆音を横目で見つめる橙和。

○謙人の家、ダイニング
謙人とあかり、帆音と橙和で隣どうしになり
それぞれ対面して
ダイニングテーブルに座り、お茶とケーキを食べる4人

あかり「橙和くんは1個下なんだ?学校も違うんだね。幼馴染か〜いいなぁ〜」

橙和「…だって。」

橙和がお前もなんかしゃべれよとでも言うように、ぼーっとしている帆音に肩をぶつけて、目線を送る。

ハッと我に帰る帆音。とっさに笑顔を作って
帆音「え、あ、はい。幼馴染。うん。いいもんですよ…」

帆音(ダメだ… 緊張と不安で、会話に集中できない。あかりさん、優しそうな人なのに…)

帆音モノ:お父さんと、あかりさんを祝福したいのに…

帆音、あかりと謙人が笑い合ってるのを見て
思わず表情が曇る。

帆音モノ:お父さん、幸せそうだな…

帆音の顔色を見逃さない橙和。

帆音、自分の手をぎゅっと握りしめる。
帆音「(祝福しないと…!)
パッと笑顔を作って立ち上がる帆音

帆音「なんかコーヒー飲みたいな。入れるね!
あかりさんミルクと砂糖入れていいですか?!」

あかり「あ…!えーと私は、コーヒーはいいかな。このほうじ茶いただくね」

帆音「…そうですか?」

笑顔でそう言いお茶を飲むあかり。
謙人が意を決したように話しだす。

謙人「帆音、あのね、実は…
あかりのお腹には、赤ちゃんがいるんだ」

ドクン!帆音の心臓が飛び上がって、
目の前が暗くなる。

帆音モノ:赤ちゃん…

ドクンドクンドクン…

絞り出したような小さな声で
謙人に確認する帆音

帆音「お父さんと、あかりさんの子供…?」

謙人、少し照れて微笑みながら、

謙人「うん。そうなんだ」

思わず目を閉じる帆音
立ち尽くしたまま、動けない

帆音(お父さんの子供…)
帆音モノ:本当の子供…

胸がギュッと締め付けられるように苦しい。
胸に手を当て苦しそうにする帆音

謙人「帆音?どうした?大丈夫か?」

帆音のそばへ行き手を伸ばす謙人

とっさに泣き出しそうな顔になる帆音。
帆音(や、だ…!)

帆音と謙人の間に、通せんぼするみたいに、
スッと手が伸びる。

そのまま橙和は帆音を自分のそばにぎゅっと抱き寄せる。

帆音(橙和…?!)

橙和は大丈夫だから、とでもいうように帆音の手をぎゅっと握りしめている。

橙和「実はおじさん、僕たちも話があるんです」

きょとんとする謙人と、
え?という顔の帆音

橙和「僕たち、結婚の約束をしてるんです。
僕が18歳になったら、結婚しようって」

謙人「は…?」
帆音(は…?!)

橙和「でね、おじさんたちが結婚するなら、
いい機会だから
僕たちも婚約して、一緒に暮らそうって話してるんですよ」

驚きで目が点になる謙人と、
意味がわからなくて混乱した表情の帆音

橙和「ねっ帆音♡」

満面の笑みでこちらを向く橙和。
言葉にならずびっくり顔の帆音

帆音モノ:え〜〜!?
























































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