憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。



 医局室の中へ入ると、研修医の小川くんが俺を見て目を輝かせた。

「羽倉先生! おはようございます! 見てください、床ピカピカに磨いておきました!」

「おはよう。いつもありがとうね。今度僕も一緒に掃除するからね」

「いえ! 掃除も研修医の役目ですのでお気になさらずに!」

 研修医の小川くんは、俺を見てはいつも目を輝かせて人懐っこく近寄ってくる。

「今日は一緒で嬉しいです! オレ、羽倉先生しか頼れる人いなくって。皆近寄るなオーラ出てるんですもん」

「ハハハ。でも小川くんの指導医は本田先生でしょ? 残り一カ月、頑張って」

「ありがとうございます! 本田先生鬼ほど厳しくて……仕事外でも冷たいし。指導していただけるのはありがたいんですが、胃が痛くて。ここまで頑張って絶えましたが、正直、オレ、羽倉先生が指導医がいいです……」

 小川くんは素直で言われたことをテキパキやり、よく、医局に残って深夜帯まで雑務をしている。俺も見兼ねて手伝いをしているうちに、小川くんは心を開いていってくれたように感じる。

 研修医に与えられる雑務はとても多い。
 
 今は本田先生は席を外していてこの場にはいないので、あえて聞いてみる。

「鬼ほど厳しいって、どういう感じ?」


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