【短編】クールな幼なじみと紡ぐロマン
「れ、玲衣くん? あ、いや。なんでもないよ?」
「何でもないわけあるか」

 久しぶりに会えた幼なじみにおどろく私。
 そんな私に玲衣くんは不機嫌そうに眉間(みけん)にシワを寄せて近づいて来る。

 小学校のころよりさらにイケメンになった玲衣くんが近づいてきて、緊張しちゃう。
 不機嫌そうな顔のままのばされた手が、私の目元をスッと軽く(ぬぐ)った。

「っ!」
「泣いてんじゃん。なにかあったんだろ?」

 不意に拭われた涙。
 その仕草に心臓がはね上がった。
 そして私のことを心配してくれる玲衣くんの優しさに、私はのみこもうとしていた悲しい気持ちをあふれさせてしまう。

「うっ……ふえぇ」
「なっ!? まだ泣くのか? ああもう。いいよ、まず思いっきり泣け」

 とつぜんポロポロと泣き出してしまった私におどろく玲衣くん。
 でも自分のカバンを地面に置いて、私を軽く抱き寄せて肩をポンポンと優しくたたいてくれた。

 そのしぐさに、そういえば昔から玲衣くんにはなぐさめてもらってばかりだなって思い出す。
 思ってることを上手く伝えられなくて、いつも言葉をのみこんでしまう私。
 そのせいで誤解されたり、変に相手を怒らせちゃったりしてた。
 そうして落ちこんだときは決まって玲衣くんがなぐさめてくれてたんだよね。
 中学生になって会うことも少なくなったけれど、玲衣くんは変わってないんだなって安心した。

「……」

 でも、そうして少し落ち着いてきたら逆にはずかしさがこみ上がってくる。
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