隣の席とは愛いれない
苦手
「あ〜バイトだりぃ〜!いいよなあ〜カズはボンボンだから!」
朝の教室。
ホームルームが始まるまでの時間に読書をしていたら、いつものように、その張りのある声で意識が現実に戻された。
「望、なんだかんだ続いてるから意外だよな。すぐ辞めると思った。なぁ、吹」
「……あぁ」
「まぁなあ〜!俺、根は真面目ちゃんだから」
毎朝、私の隣の席はものすごく賑やか。
チラッと教室に目を向ければ、クラスの女子のほとんどがソワソワと彼らを見つめている。
学年で一番目立つ不良グループ。
その中でも、一際絶大な人気を誇るのが、私の隣の席である、市木吹くん。
今も、彼を中心にグループの輪はできている。
180センチ近くありそうなスラリと高い身長に、無造作に整えられた白に近いぐらいの金髪。
切れ長の目に高い鼻と薄い唇。
男性にそこまで興味のない私でも、すこぶる整っているということは良くわかる、綺麗な顔の持ち主だ。
顔面偏差値が高すぎるとかで、他校にもファンがいるんだとか。
でも……。
無口で女嫌い。