Close to you


 私は自分の部屋にこもって、ベッドで毛布をかぶり震えていた。


 耳をふさいでも、お母さんのキンキンした声も、物が壊れる音も、真弓の悲鳴も、お祖母ちゃんの叫びも、指のすき間を通って聞こえてくる。


 目をつむっても、目を血走らせて歯茎もむき出しになった恐ろしい顔も、真弓の泣き顔も、ズタボロになったリビングも、お祖母ちゃんの苦しそうな顔も、まぶたの裏に浮かんでくる。


 早く終わって。


 全部終わって。


 何度もそう祈った。


 ……永遠にも思える時間が過ぎて、なんの音も聞こえなくなった。目を開けて、耳から手を離す。


 そっとベッドから抜けだして、ドアをゆっくりと開けた。



「……っ!?」



 心臓が止まるかと思った。


 無表情のお母さんが、部屋の前に立っていたからだ。



「お母さん……」



 私が恐る恐る声をかけると、お母さんは感情の読めない目を向けてきた。
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