Close to you

真弓



 塾から帰って部屋に戻ると、机に奥野さんからの手紙が置かれていた。


 お風呂に入ろうと思っていたのも忘れ、真っ白な封筒をそっと手に取る。


 壊れものでも扱うように、丁重に開けると、小さめのちょっと角張った字がつづられていた。



──愛弓様

 真弓様のことですが、弟が心配した通り西校のあるグループと付き合っていました。



 口から細く息を吐いた。手紙の他には数枚の写真が同封されていて、そのうちの1枚は真弓がいかにもヤンキー然とした男の人たちと笑いあう写真だった。


 写真のなかの真弓は化粧をし、細い脚をむき出しにしていた。春先というのもあって、見ているだけで寒そうだ。余計なお世話だけど。



(だけど、すごく幸せそう……)



 真弓の笑顔が見られるなんて、たとえそれが写真であってもいつぶりだろう。


 あの子の笑顔が見れたのは幼少期だけで、小学生のときの暗い表情しか思いだせなくなっていた。
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