Close to you


 でも浅いのは私だった。


 全くもって考えが浅い。



「どうして、私の大事なものを壊していくの?」



 真弓の低い声が響く。


 フローリングの床は冷たくて固かったけど、真弓の声のほうがよっぽど冷たくて、恐ろしかった。



「愛弓はなんでも持ってるじゃない」



 声は冷たいのに、目の奥はごうごうと燃えている。私への憎しみを薪にして、赤く、赤く吹くように盛る。


 私の舌は貼りついたように動かなくなって、口も喉も渇いて声なんて出なくなってしまった。



「私みたいな出来損ないが、大事なものを持ってるのが、そんなにイヤ?」


「ち、ちが」



 私はようやくそれだけ喋れた。「それは違う」と言いきりたかったけど、舌も口も上手く動かせない。



「違うなら、なんでこんな写真見せたの?!」



 思わず目をつむる。


 真弓の悲痛な叫びに、私のしたことは逆効果でしかなかったと、今さら理解した。
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