Close to you


 次の日の帰り道。


 私は相変わらずベンチに座って、本を読んでいた。


 今日は百人一首の本──というか、マンガ──を読んでいる。


 歌をマンガ化してわかり易くしたもので、これならお母さんにバレても怒られることはない。


 これ以外にも、マンガ化して解説している本はたくさんある。


 私が触れられるマンガといえば、このくらいのものだった。


 淡々と読みすすめていたけど、あるページでふと指が止まった。



──陸奥のしのぶもぢずりたれゆゑに

  乱れそめにしわれならなくに



 自然と真弓の顔が浮かんできた。昨日の辛そうな顔じゃなくて、無邪気に笑う、ずっと昔の真弓だ。


 真弓も同じように、心を乱されて苦しんだんだろうか。


 彼の気持ちが、本当は自分に向いていないと気づきながら。



(それでも、幸せそうだった)



 まやかしの幸せでも、真弓にとっては嬉しかったんだろう。

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