Close to you


 奥野さんが言うには、真弓は大量の睡眠薬をお酒で飲んだということだった。



「真弓様に洗濯ものとお食事を運ぼうとしたときに、離れからお酒の匂いがいたしました」



 異変を感じた奥野さんは、離れに急いで踏みこんだ。


 カギはかかっていなかったという。



「真弓様は床に倒れていて……お酒の缶と、睡眠薬の錠剤が転がっておりました」


「……その酒さ、あいつらにもらったモンだよ、たぶん」



 奥野くんがポツリとつぶやいた。


 私はなにも返さず、ベッドの近くにある丸イスに座っていた。

 
 2人はそれ以上なにも言わずに、黙ってそばにいてくれた。


 どのくらい時間が経ったのか、バタバタとにわかに廊下が騒がしくなった。



「愛弓!」



 お母さんが大慌てで病室に駆けこんできた。顔色は真っ青だ。


 それはそうだろう。邪険にしていたとはいえ、真弓が病院に運ばれたんだからいくらお母さんでも──



「あなた、塾は!?」


「え……?」


「今日はテストでしょう!?」



 ──お母さんでも、真弓を心配しているんだろうと、そう思っていた。
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