シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 慧悟さんは何かを覚悟するようにふう、と息をつく。
 その表情からは、鋭さはもう抜けている。
 こちらを振り返り、ふわりと笑った。

 思わず見惚れてしまう。
 いつの間にか涙は止まっていた。
 代わりに、胸がドキドキと高鳴っている。

 ――私は、慧悟さんと結ばれていいんだ。

 安心したはずなのに、胸の高鳴りは収まらない。

「希幸。キミは、これで正式に僕のお姫様だよ」

 そう言って、慧悟さんが腰を折る。彼の顔がこちらに近づく。 
 唇に優しい熱が触れ、そこから慧悟さんの愛情が全部伝わってくる。

 大好きだ。
 愛してる。
 それだけじゃ伝わらない、この胸に何年も押し込めていた想いが、溢れている。

 視界がぐしゃぐしゃになって、また泣いていたのだと気づいた。
 慌てて袖で拭うと、まだ優しく微笑む慧悟さんの笑顔が目の前にあり、ドキリと胸が跳ねる。

「いつの時代も身分の差は根深く簡単に超えられるものじゃない」

 そっと、オーナーが口を開いた。

「けれど、慧悟くんと希幸が互いを想い合う姿を見て、あの時の私の無念を……どうにか、希幸には味わわせたくないと思ったんだ」

 いつの間にか、部屋の中に奥様と旦那様の姿はない。
 優しく微笑み手を上げ部屋を出て行こうとするオーナーに、慧悟さんは頭を下げていた。
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