シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「ローズマリーが、ですか……?」

 かつては悪いものを清める力を持つとされていたローズマリー。そういう意味では、慶事のパーティーにはもってこいの食材ではあるが。

「幸せな結婚の花なのよ。ローズマリーの花冠……覚えているでしょ?」

 突然話を振られるも、旦那様は頬を赤く染め「そうだったかな?」と眉間を掻く。

「そうよ。愛と忠誠の象徴の花。ヨーロッパの結婚式の伝統だって、あなたがどうしてもって、そうしたんじゃない!」

 奥様が旦那様の腕を軽く押す。
 私は旦那様が頬を赤く染めた理由に納得していた。

 同時に、幾美家のレセプションパーティーの内容に、ピンときてしまった。

 急に胸が靄がかる。
 慌てて笑顔を貼り付けたけれど、込み上げたものを吐き出したくなる。
 慌てて飲み込んだら、喉の奥が酸っぱくなった。
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