シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 食事の進み具合を考慮しながら、慧悟さんたちにお出しするメインのデセールをお皿に盛り付け始めた。

 丁寧にカットした春のフルーツタルト。
 赤やピンクの華やかな色合いは、ご結納されたばかりのお二人にはお似合いだと思う。

 ミニャルディーズとして、マカロン・パリジャンを添える。
 慧悟さんをイメージした優しい黄色と、彩寧さんをイメージした淡いピンク色に生地を焼き上げた。
 二つが混ざり合ったら淡く優しいオレンジ色になる。
 きっと、二人がこれから築く家庭は、温かく優しい雰囲気になるだろうと思う。

 といえども、私はベリが丘を離れてから、慧悟さんに会うのは今日が初めてだ。
 彩寧さんとも、メッセージアプリ上のやりとりはしているが、直接会うのはベリが丘を離れて以来。7年ぶりである。

 盛り付けの終わったお皿にクローシュをかけ、木製のワゴンに乗せた。
 二人の目の前で最後の仕上げをするために、二段目に仕掛けのシャンパンを乗せる。

 準備万端。
 けれど、それはこれから2人にデセールを提供しに行かねばならないということでもある。

 その時間が近づく度に、鼓動が早まっていく。
 ドクン、ドクンと打つ心臓をごまかすように、私は笑顔を貼り付けた。

「前埜さん、デセールお願い」

 料理長に言われ、「はい」と厨房を出る。
 ワゴンを押す手は、汗ばんでいた。
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