【完結】養ってやるかぁ!!公園で出逢った無職男子が……まさかまさかの、そのまさか!?

 でも、それは本心。
 ハッと我に返ったが、始が頬を染めて微笑んだ。

「はい……嬉しいです……雪子さん、貴女はまっすぐで明るくて、一緒にいて楽しい安らげる。そしてなんでもできそうな気持ちにさせてくれる! 俺は、そんな貴女を心から愛しています」

「始くん……」

 二人の手が重なる。

「雪子さん……」

「で、でも貴方はこれから……婚約者だっているのに、私は平民で、無職で……ダメだよ……」

「平民だなんて! そんな事は関係ありませんよ」

「……あるわよ……だって、御両親も相当にお怒りなんじゃ……?」
 
「父には頭を下げてきました。でも驚いた事に、子供の頃からずっと跡継ぎとして休む暇もなく学び働き続けた日々を強要してしまったと……俺を精神的にも追い詰めることをしたと、父のほうが謝ってきたんです」

「お父様が……?」

「はい。俺が取り返しのつかない選択をするつもりではと母も憔悴しきっていて……俺が戻った事を喜んでくれました」

「そうだよね……お母様にとっては辛い七日間だったのよね……」

「申し訳ない事をしましたが、あんな風に思われてると全然思っていなかったんです。俺は反抗期もなくて、ずっと言いなりに育ってきたから……俺は、跡継ぎだけの存在と思われてるって思い込んでました。……でも、違いました。両親なりに俺を愛してくれてたんだなって……25にもなって、理解した。最悪の馬鹿息子ですよね」

 切なそうに苦笑いした始の手を、ぎゅっと握る。

「……仕方ないよ……寂しかったよね……ずっと」

「……だったんですね……でも俺を救ってくれた人がいると話しました。両親は貴女に会って御礼がしたいと言っています」

「嘘でしょ……でも、それと交際はまた別で……それに……こ、婚約者の方は?」

「実は向こうの女性も、駆け落ちしたそうですよ」

「え!?」

 驚く雪子に、始が笑った。

「ポストカードが入ってたんです。『縁談をぶち壊してくれて、ありがとう! 私は愛する人と生きていくわ! バイバイ!』って」

「わお……」

 御曹司や令嬢も大変だなと雪子は思う。
 握った手に、今度は始が力を込めた。

「俺は雪子さん以外考えられないと伝えていますし、無理なら……まぁこのまま家を出ます。二人で仕事を探しましょう」

「そっそんな……」

「免許も取ります、なんでもします。一生懸命働いて貴女を幸せにします。だから俺と結婚してください」

「……まだ出逢って一週間だよ……?」

「俺の人生で一番幸せな一週間でした。この七日間が死ぬまで続くなんて最高じゃないですか」

「もう……呆れちゃう……」

 何もない二人の一週間。
 でも……そう!

「返事は……?」

「愛してる始くん……!」

 雪子にとっても人生で一番幸せな、一週間だった!!

 始は微笑んで、雪子を強く抱き締めた。
 雪子も始を強く抱き締める。

 始が口づけすると、自然に舌が絡んで二人はどうしようもない熱情にかられる。
 何度か舌を絡めながら、息が荒くなる始の胸を少し押して距離をとる。
 でないと、このままソファで始めてしまいそうだから。

 まだ話をきちんとしないと……二人で荒い息を抑える。

「……御曹司くんは、いつから復帰するの……?」

「はい、そうですね……明日は面接で、明後日からでしょうか」

「……めんせつ……?」

「……俺の秘書の面接をしたいんですが……どうですか?」

「え……始くんの……?」

「はい、雪子さんさえ良ければ……俺を、草神グループを支えてくれませんか……? 言いにくいんですが、あの雪子さんの会社はあのままの継続は難しいです。今日の実行犯は全員逮捕されるでしょう」

「ぷっ! あの会社になんも思い入れも、もうないわ! 逮捕されろ! されろー!」 

 今日の事件は許しがたい。
 絶対に制裁してやる! 舐めるなよ! と雪子は思う。
 さっきはいいと言ったけど、明日は病院に行って警察にも行かなければ。
 
「経営陣は総入れ替えで、俺が後処理をして会社を立て直す事になると思います」

「えっ……! バカ社長失脚! ざまぁすぎる!!」

「あは、会社を潰すわけにはいかないですが、膿は出さなければ」

「やるわ! 秘書! じゃあ明日はいっちょ面接に伺います!! お願いします!」

「はい、よかった。一度会社にも顔を出しましょうね」

「えぇ! もちろん!」

 始と一緒に会社へ出向いたら……皆の驚愕する顔を思い浮かべると笑ってしまった。
 
「因果応報! こっちは災い転じて福となす!」

「雪子さんのそういう元気なところが大好きです。でも彼等と向き合ってしんどい時は言ってくださいね」

「始君のそういう優しいところが大好き! 全然大丈夫よ!」

 雪子の笑顔に、始も微笑む。 

「面接は午後からでも……いいですよね。今は愛し合いたい……貴女にもう夢中なんです」

「ふふ……じゃあベッドでね、御曹司さま……私も貴方に夢中だよ」

 御曹司との婚約、雪子は今後どうなるのか?
 それは明日の風任せ?
 健康で生きていればなんとでもなる!
 
 肉食女子のシンデレラストーリーが、此処から始まる……。

 ~fin~

 
 
   
 
 
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