一匹狼の君は、どうしたら笑うんだろう?

第四話

 そうして、私だけが雄介という男子の秘密を知ってしまった。
 あの光景は信じられないが、否定しきれないのも事実。
 というのも、雄介という人物が極悪人とはどうしても思えないのだ。

 確かに見た目は凶暴だし、クラスメイトが避けるのも分かる。
 教師陣の発言は当然の如く無視し、傍若無人そのもの。
 だが、逆に言えば放置しておけば静かなのだ。自らクラスメイトを脅しているような場面に遭遇したことはない。……ただ、残念ながら、その静けさっぷりが恐怖を演出しているとの話もある。

(……あの子犬、大丈夫かな)

 一つだけ、懸念点があるとすれば子犬の存在だった。
 拾われた後、しっかり保護されているのだろうか。
 偶然にしろ、あそこに出くわした私。子犬の安否だけでも知りたかった。
 このまま他人に徹し、無関係を装うのは後ろ髪を引かれる。

(けど、どうやって聞けばいいの……?)

 その通りである。心配とはいえ、問いだすのはやや怖い。
 あの笑顔が頭から離れないとはいえ、恐怖心が完全に消えた訳ではないのだ。
 授業も無事終わり、昼休みを過ごしながら私は内心で溜息を零した。

「ねぇねぇ、環。さっきから難しい顔してる」
「……え? う、うぅん。なんでもないよ」

 向かいに座っている友達が胡乱気な視線を向けてきた。
 進級と同時に席が近いという理由で一番仲良くなった女の子だ。
 私は慌てて首を左右に振って、否定の意を示した。

「ほんとにぃ? しかも、あっちの方見てたし」

 と彼女の視線の先を追うと、雄介の席だった。
 ……私は無意識に彼の方を向いていたらしい。マジか。
 考えに耽っていたとはいえ、これでは、

(雄介のこと好きなのとか聞かれるじゃん!)
 
 違う。断じて違う。私は子犬を想っていただけだ。
 そりゃあ、あの笑顔やら朗らかな口調の真意は知りたい。
 だけどもそれはあくまでも関わった人間として。好きとかそういう気持ちはない……と、思う。それに雄介のことを好きとか勘違いされたら今後の学校生活が過ごしづらくなる。女子は恋愛話に敏感なのだ。

「おっきな声じゃ言えないけど、ほんと迷惑だよね」
「……ん?」

 警戒していた内容とは違う方向のようだった。
 彼女は目を細めた後、大袈裟に肩を竦めた。
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