花咲くように 微笑んで
その頃、みなと医療センターの小児科病棟では、目を覚ました子ども達の嬉しそうな声が響き渡っていた。

「わー、サンタさんからのプレゼントだ!」

枕元に置かれたプレゼントに、どの子も目を輝かせている。

「サンタさん、来てくれたんだ!」
「先生、見て!プレゼントだよ!」

朝から興奮気味の子ども達に、三浦も目を細めて頷く。

「良かったな、みんな」

すると5歳の女の子が、三浦の白衣の袖を引っ張った。

「ん?どうしたの?ももちゃん」

しゃがんで視線を合わせると、女の子は小さな声で話し出す。

「あのね、きのうの夜、王子様を見たの」
「王子様?サンタさんじゃなくて?」
「うん。夜、トイレに行こうとしたら、プレイルームに背の高い王子様がいたの。ピンクのスカートの女の子をお姫様だっこしてたよ」

へえー!と三浦は声を上げる。

「かっこよかった?その王子様」
「うん!かっこよかった。お姫様もかわいかったよ」
「そうなんだー。それは先生も見たかったな」

女の子に笑いかけると立ち上がり、ふっと小さく笑みを洩らす。

(ようやくだな、やれやれ。クリスマスの王子様か…。粋なことするな)

そしてもう一度、頬を緩めて微笑んだ。
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