花咲くように 微笑んで
「ご馳走様でした。とても美味しかったです」

出口に案内してくれるスタッフに声をかけると、にこやかに「またどうぞお越しくださいませ」とドアを開けて見送られた。

菜乃花もにっこり笑ってからドアを出る。
と、外に出た途端ハッと我に返った。

「た、大変!無銭飲食しちゃった!」

慌てて戻ろうとすると、颯真が笑いながら止める。

「大丈夫だよ」
「でも、あのスタッフの方きっと忘れてて…」
「あはは!そんなことないから」
「え?それじゃあ…」
「払ってあるから、大丈夫だよ」
「ええ?!いつの間に?」

菜乃花の問いには答えず、颯真は車のロックを解除する。

「うちまで送るよ。あ、自宅の場所を知られたくないかな?」
「いえ、そんなことは」
「じゃあ、またナビしてね」

そう言って助手席のドアを開けて菜乃花を促す。
菜乃花は取り敢えず乗り込んだ。

「あの、宮瀬さん。私の分もお支払い済ませてくださったのでしょうか?すみません、すぐに払いますから」

運転席に颯真が座るやいなや、菜乃花は財布を取り出して言う。

「いらないよ。せっかくの美味しい料理の余韻が半減する。気持ち良くおごらせてくれ」
「ですが、そもそも私がポーチの件でご迷惑をおかけしたのに…」
「本当にいいってば。それよりナビは?まだ始まらない?」
「あ、えっと。左に出てしばらく真っ直ぐ進んでください」
「了解」

10分足らずで菜乃花のマンションに着く。
菜乃花は、ドアを開けてくれた颯真に向き合い改めて頭を下げた。

「宮瀬さん。今日は色々とありがとうございました」
「こちらこそ。ランチにつき合ってくれてありがとう。楽しかったよ」
「私の方こそ、ご迷惑おかけしたのにご馳走になってしまって。本当にありがとうございました」
「じゃあ、また」
「はい。お仕事お気をつけて行ってきてください」
「ありがとう」

菜乃花は颯真の車が見えなくなるまで見送った。
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