二人の永遠がこの世界になくても
春華は私を連れたまま、お隣さんの玄関前にしゃがみ込んで、チョークでアスファルトに落書きをしている男の子の前に、同じようにしゃがみ込んだ。

「こんにちは。何してるの」

「…誰ですかぁー」

「そこの家の人だよ」

春華が指差した私の家を見上げて、男の子は「じゃあ知らない人じゃないからお話してあげる」って言った。

「私のこと知ってるの?」

「見たことあるもん。このお兄ちゃんのことは知らない人だけど。お姉ちゃんの知ってる人でしょ?」

「そうだよ」

「じゃあお話してあげる」

「知らない人だったらお話してくれないの?」

「お兄ちゃん、僕よりお兄ちゃんなのに知らないの?知らない人とお話したら大人に怒られるんだよ」

「あはは。君は賢いね」

私に褒められた男の子は得意げな顔で笑った。

「ここ、落書きして大丈夫なの?」

「明日は雨が降るから大丈夫なの。雨が消してくれるんだよ」

男の子は言いながら白で傘を描いて、青で水滴模様を描いた。

「上手だね」

「お兄ちゃんも描く?」

「ううん。でもさ、君にお願い事があるんだ」

「お願い事?」

男の子が春華を見上げた。
私も二人の隣にしゃがんで春華を見た。
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