二人の永遠がこの世界になくても
三十分くらい探して、ようやく春華が莉奈ちゃんに言った。

防波堤の下。
すぐそばの小さい階段を上れば、下には海が広がっている。

広くて深い海を目の前にして、莉奈ちゃんは泣き出しそうな顔をしている。
たぶん、一番嫌な想像をしているんだろう。

「リナちゃん、もう町には居ないのかもしれない」

「そんな…そんなはず無い!だってあの子は一度も外に出たこと無いんだよ!?そんなに遠くになんて…」

「戻ってきたらいいのにね。魔法みたいに…」

「魔法…?」

「そうだよ。魔法みたいに、願ったら莉奈ちゃんの目の前に戻ってきたらいいのに。ね、春華」

「うん」

「魔法なんて…。でもそれでもいい…。それでもいいから無事に戻ってきて欲しい。お願い…戻ってきて。戻ってきますように…!」

それは突然だった。
春華がはっきりと指示をしたわけじゃない。

でも莉奈ちゃんがギュッと目を閉じて、春華の前で願った瞬間に、春華の手の平にぽうっと弱い光が灯った。

莉奈ちゃんの映像を見せてくれた時みたいに。
それは今までもそうだったのかな。
全然気づいていなかった。

「莉奈ちゃん、アレ…」

「…おコナ!」

向こう側から走ってくる白い猫。
こっちに近づいてくるにつれて、首元の黒い斑点も見えてきた。

莉奈ちゃんが猫に駆け寄って、猫が飛び込んでいく。
しゃがんで猫を受け止めた莉奈ちゃんはギュッと抱き締めて泣いていた。

私達がそばまで近寄ってもこっちを見ない。
一瞬顔を上げたけれど、私と春華の存在なんてすっかり頭の中に無いみたいだった。

「忘れたの?」

「たぶん」

私達は小さい声で囁き合った。
< 43 / 115 >

この作品をシェア

pagetop