どろびく(#We l♡ve draw a picture)

イツメン(原作)×どろぴく 前編の後編

叉優side

木々を彩る鮮やかな桃色は徐々に色褪せ、散ってゆき、地面を絨毯の様に装飾する。その真下で風に身を任せゆらゆらと揺れる色とりどりのチューリップ。遠い所から聞こえる鶯の鳴き声、登校中の小学生の元気な挨拶…。異世界にくる前と殆ど変わらない光景。ただ一つ、異なって目に入るのは、黒い煙の様な物や、何かを呟く物体があちこちに、初めからそこに居たかの様に存在している事。どうしても気になってしまい、隣を歩く黒子に聞いてみた。

黒子「…?あゝ、妖力が強いからそこらの低級妖も目視出来ちゃうんだよ。大丈夫、こういうのは襲ってこないし、襲われても殴れば一発☆」
石川「変な事教えないで」
黒子「防衛を教えただけだよ」

異界にきてから知った事、私達どろぴくは「妖力」が強いらしく、妖が目視できる事。元の世界には妖が存在していなかったから、こんな事は知る由もなかったが、この世界では、以外と繋がりをもてたりもする。

金光「まー、実は人間だと思ってた友達が妖でしたー。なんて無くはないからね。」
石川「そんな事があったから、PFAに入ったって単細胞もいるし」
叉優「え…?」

こっちの話だよ、と話を強制的に打ち切られたが、誰だって入られたくない話くらいあるだろうし、無視した。でも、本当にそんな事があったとしたら、少し…

叉優「寂しいな…」
黒子「叉優は…優しいね」

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それからしばらく談笑しながら通学路を歩いた。時々襲ってきた脳無し(黒子談)を石川と黒子が捌いてくれたおかげで安全に高校の門前までくることができ、「菊島高校」と書かれた門をくぐる。くぐった所で、ノートを持った長い紙の女性がこちらに歩いてくるのが見えた。よく見れば、腕には風紀委員と書かれた紙を巻いており、なんだかんだ普通の高校であると、安堵した。

黒子「あ、清原じゃん。……もしかしておこ?」
清原「んーん。怒ってないよ?」
黒子「嗚呼…目が笑ってらっしゃらない…」

清原と呼ばれた桃色髪の女性はにっこりと、黒い笑みを浮かべながら真っ直ぐに黒子に向かっていく。それを察した黒子は「あ、死んだわ」と呟いて清々しいほどの笑顔で対応している。その隣にいた金光は興味なさげに、私達の方へ近づき、彼女について説明してくれた。

金光「この子は清原梓(きよはらあずさ)。私の幼馴染で、PFA所属。イツメンだよ」

事前に教えてもらっていた、PFAの前戦第二局…私達が一夜を過ごしたあの部屋に配属されているのは、全員この高校の2年F組の生徒であるらしい。元々PFAは、組織の中で12人のグループを作り、そのグループで活動する事となっているらしく、前戦第二局…通称「イツメン」も、金光と石川で集めたメンツらしい。そのイツメンのメンバーである人の一人が、目の前の清原というわけだ。

清原「…あ、ごめんね。初めまして、清原梓って言います。よろしくね」

ようやくこちらに気づいた清原が私達に軽く頭を下げた後に、微笑みかけてくれた。桃色の長い髪が風に掬われてたなびくのがとても幻想的で美しい。

黒子「清原が怒ってるその件さー、私じゃなくて佐久間の仕業なんだけど」
清原「…マ??ごめん黒子。ちょっと後で佐久間締めないと」
石川「ほどほどにねぇー^^」

早々に去って行こうとする清原の後ろから、同じ風紀委員の紙を腕に下げた女性が走ってきた。椿月と同じ様な紫色の髪をサイドで結び、綺麗な装飾品のゴムでそれを纏めている彼女は、清原の隣までくると、息切れしたまま、こちらを見上げた。

鍋島「はぁ、はぁ…石川達が、その異世界の子?連れてきたって聞いて…挨拶…しとかなきゃって…」
清原「うん、その前に落ち着こう。この子は鍋島あずさ。PFA…イツメンだよ」
叉優「一気にイツメンの人増えるな」

黒子、松井、金光に石川…柳原に…清原と鍋島。まだ半分くらいしか会ってないのに、一人一人のキャラが濃ゆい。多分、どろぴくも濃ゆいだろうけども、そこは省く。鍋島は息を整えた後に自身からも挨拶をし、急いでいるからと、早くに去っていった。

黒子「Wあずさ、毎日風紀大変ねぇ」
石川「おつかれさまー」
清原「うん、イツメンが主に校則破ってんだけどね?」
黒子「あは♡(悪びれもなく)」

確かに…。考えてみれば、石川も黒子もピアスをしているし、金光は簪をさしている。(簪ダメなんて校則にわざわざ書かないし)ましてや黒子なんて、その上にパーカーとヘッドホンだ(そして前髪片方長すぎ)。バリバリ校則無視であろう格好。

清原「石川とかそれで認識されてるけど…一応生徒会長でしょ!黒子も金光も!!生徒会役員でしょ!」
黒子「うにぃ〜〜、」
金光「うゆーーー、」

【やべ続かねぇわこのシーン邪魔カット】

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叉優「はぁ、朝から凄いね…」
石川「あはは…」

あの後なんだかんだ通して貰えた私達はそのまま、クラスに……という訳にも行かず、職員室に来ていた。とりあえず来いと担任に言われた☆とキャピキャピしている金光に案内して貰い、職員室まで行く。ちなみに石川は会長としての仕事、黒子はなんかいろいろあるらしいので、途中で別れたのだった。金光の案内を経て、無事職員室に着けた私達は、金光と共にその奥へと進む。金光が立ち止まった先の机には、ため息を着きながら書類仕事をする、丸メガネの若い男性がいた。恐らく、この男性が金光達イツメンの担任なのだろう。

璃百(たしかにイケメンではある)
魅麗(若くね…?)
金光「先生ー、連れてきましたよーん」
三浦「…?あぁ、黒子が言ってたやつか…まったく、アイツ仕事増やしやがって…」

三浦先生(後から名前は知った)は、何日間いるのか分からない私達に、とりあえず2年F組に居るように言った。まぁ、知ってる人がいる方が安心だろうから、有難くはあったが、先生から伝わる疲労が半端じゃなかった。寝てるのかな、この人…

三浦「学校の詳しい事は金光達にきけゃいい。頼んだぞー」
金光「もっちのろんっ!よし、クラスいこー!」

笑顔でこちらの手を引く金光にされるがままに従い、教室に行く。まだ時間帯は早めの様で、4人しかその場にはおらず、4人中半分は見知った人であった。先程まで一緒に居た黒子と、初日に私達を助けてくれた松井が言い争っているなかで、それに対し度々口出しをして両者にキレられる高身長の人とそれを横目に本を読む人。まさに三者三様、とでも言おうか。いつもの事だから、と挨拶して教室に入る金光に続いて、私達も教室に足を踏み入れた。

松井「あっれー、黒子ちょっと背縮んだァ?あ、そっかー、制服の時はヒールで身長盛れないもんねぇー(笑)」
黒子「煽りスキルゴミかお前。たかが5cmだろいばんじゃねぇ♡」
高身長「俺から見ればどっちも小さいから安心しろ(笑)」
松井黒子「「うるせぇ黙ってろ糸目の巨人!」」
高身長「進〇の巨人みてぇに言うなよ」
読書「他所でしやがれや……」
魅麗(黒子ってヒールで盛ってたんだ)

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金光「どんぐりの背比べは後にして、佐久間と大崎は自己紹介!」

私から見れば黒子も松井もデカいから、と2人を金光が制しながら、もう二人の方へと顔を向けた。(その時に高身長の人を殴ったように見えたのはきっと気のせいだろう)
なにが面白かったのかは知らないが、ケラケラ笑う高身長の人が先人をきって自己紹介をしてくれた。

佐久間「俺、佐久間ね、佐久間良平(さくまりょうへい)。これでも一応生徒会会計。」
黒子「お前私に会計の仕事押し付けるくせして何いっちょ前に生徒会名乗ってんねん( ꐦ꒪꒫꒪;)」←書記

また始まりそうな喧嘩を、読書をしていた人が鋭い目線で辞めさせた。それに素直に従う黒子とまたもやケラケラ笑う佐久間を横目に、本を閉じた彼が、口を開いた。

大崎「大崎彗(おおざきけい)。なんか...ウチのが迷惑かけるみたいで悪いな。」
佐久間「あれ、大崎初対面の人相手に猫被らねぇんだ」
松井「傷口を抉らないでやれよ…」
黒子「情報収集が必要だったから猫かぶって色んな人と交流してただけだよ、あの時の大崎は(笑)」
大崎「なんか腹立つ」
金光「まぁ、とりあえずこっちも自己紹介してやって」

振られた通りに、2人に向かって自己紹介をする。一通り終わった所で、石川や柳原が教室に戻り席についた。そのタイミングに先生も教台に立ち、HRが始まった。大人しく用意された後ろの席に座った私だったが、正直HRの内容は殆ど入ってこなかった。急に飛ばされた異世界での生活…ましてや学校までにも通えていることに対する疑問やこれからのことなど、考えることは勿論沢山ある。沢山あったのだが、席に着く前に大崎が呟いた「揃いも揃って善人ばっかだな」という言葉と、異世界初日に黒子に言われた「善人すぎる」という言葉の意味や、意図を知りたかったのだ。

三浦「松井ー、お前ノートはまともに取れよー」
松井「はーーーーーーーーい。」
叉優「……」

気のせい、かな。

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side無し

柳原「よっしゃ昼休みー!!!!」
石川・椿月「うるさ」

さも当然かの様に習っている範囲が同じだった事によって、授業はなんなりと進む事ができ、現在は昼休み。数学の先生も国語も理科も社会も、なんとも個性的な先生達ではあったが、ちゃんと授業はしてくれたのでとりあえず安心したのは言うまでもない。

魅麗(先生達名前からすごいのよ…)

数学 池野周走流名(いけのまわりはしるな)
国語 木奥双質(きおくそうしつ)
理科 実験太郎(じつけんたろう)
社会 地理斗時差男(ちりとじさお)
※覚えないでいいです。頭おかしくなる。

清原「今日上、空いてるかな…」
鍋島「空いてるって黒子が言ってた。でも人はいるだろうね」
石川「…生徒会室使うか」

石川に連れられて叉優達が着いたのは生徒会室。普通の教室より、少しばかり豪華に作られた生徒会室には、勿論誰もおらず、悲しいほどこじんまりとしていた。石川達は毎度昼休みになると、屋上かここで過ごすらしく、今回は叉優達のこれからを話す為にと、生徒会室を開けてくれていたらしい。

金光「ま、弁当食べながらゆっくりはなそーや」
石川「えっと、とりあえず座ってよ。…椅子が一つ足りないね…佐久間、お前は立て。」
佐久間「俺に人権って適用されねぇの?」
黒子「……私使わないから、使えば」
佐久間「黒子が優しいと吐き気がするな」
黒子「切り刻むぞ( ꐦ ・-・ )」

言い争いが始まりそうな二人の間をわざと通って長机を出す石川の手際を見習い、叉優も人数分の椅子を出す。右から叉優、椿月、璃百、金光、と並び、向かい側に魅麗、楼成、石川、佐久間が順に座り、各々昼食の準備をしだす。ちなみに黒子はソファに寝そべって片手に持った本を眺めている。

石川「ごめんねー、客人に椅子出し手伝ってもらって」
叉優「いや、こっちは養ってもらってる身だし、これだけじゃ全然足りないよ…」
金光「いい人すぎて眩しい」
黒子「私から見ると金光も眩しいから。二人ならぶとヤ○ダ電気の照明コーナーみたいだよ。」
佐久間「お前真っ黒だもんな。身も心も」
黒子「てめぇもだろ黒の化身が」

パンパン、と誰かが手を叩く音が響く。言わずもがな、喧嘩をおさめた石川なのだが、自然と他も石川へと視線を移す。当の石川は、優雅に昼食を取り出した。きょとんとした叉優達にきょとんとした石川は、昼食をとる様に施し、各々のタイミングで食事に手を伸ばしだした頃に改めて説明をしようとホワイトボードの前に立った。

石川「ベテルの話は黒子とかに任せるとして、まずは基礎だよね…」
黒子「私じゃなくて大崎にしよーよー。」
石川「大崎は部活の方に色々あるらしいから。黒子よろしく」

それじゃあ、と話を繰り出す石川に、一同は食事から集中をそらす。こほん、と咳払いをしたのち、ホワイトボードに文字を足しながら説明は始めた。

石川「本当はもっと複雑なんだけど、必要最低限に絞って説明するから、わからなかったら質問して」
佐久間「はい、質問」
石川「じゃ、始めるよー(無視)。」
佐久間「俺の人権の無さよ…」
石川「まず、この世界には三つの種族が存在する。神、人、妖(あやかし)の三つ。神をみるには神力(しんりょく)ってのが必要で、妖をみるには、妖力(ようりょく)ってものが必要なんだけど、それを皆は初めから持っていた。これについては私も何もわからないね。」
金光「神についての説明は必要な時で良さそうだから省くね。問題は妖。妖は力を求めて妖力の高い人間を食す。それを防ぐのが、私達イツメン…というかPFAって組織の仕事ね。此処までは大丈夫?」

気遣う様にこちらを除きこむ金光に、冷静に璃百っが言葉を返す。

璃百「つまり…妖は、鬼◯の刃でいう鬼で、PFAは、鬼殺隊…ってこと?」
佐久間「まぁそうだな。それに神って種族が入った様なもんだ」
黒子「鬼◯だと、鬼の急所は首でしょ?妖は、体のどこかにある『核』が急所になる」

本から目を離すことなく、黒子が補足する。それをきいた叉優は、眉間に皺を寄せながら、呟いた。

叉優「核…細胞を一つ一つ切るの?」
金光「そんな生物分野的なのはいいんだよ。妖には、宝石のルビーみたいなのがあるから、それを特殊な武器を使って壊すの」
黒子「…。百聞は一見にしかずでしょ」

片手に持っていた本をやっと閉じた黒子がソファから起き上がり、緩めた首元から鎖骨が見えそうなくらい引っ張る。そうして晒された黒子の首元には、今さっき説明を受けたばかりの、『ルビーの様なもの』が埋め込まれていた。それらの言動を、判断力や瞬発力等に長けているどろぴくは一瞬にして、理解した。

叉優「黒子は…妖、なの…?」
金光「……黒子は妖じゃないよ。人でもないし、神でもない。」
黒子「逆に言えば、神でもあるし、人でも妖でもある。」

本で口元を覆い、含み笑いを見せる黒子に困惑しつつ、石川が話を続けるというので、とりあえずそちらに集中する。

石川「黒子の事はいいんだよ。私達も知らないから」
椿月(知らないんだ…)
楼成(一番知りたい所をはぐらされてる…)
璃百(石川達が知らないとか黒子は秘密主義すぎかよ…)
佐久間「次からが一番気をつけてほしいやつだな」

今までおちゃらけていた佐久間が、唐突に真剣になったのを感じ、只事ではないと察した叉優達は自分を落ち着かせる様に、再度石川に視線を向けた。

石川「妖の中でもトップクラスに強い奴らが作り上げた組織『ベテルギウス』その中で、特に知能や力が強いのは“一等星”と呼ばれ、それらが組織を支配している。」
佐久間「一等星、二等星、その他って階級があるんだ」
魅麗「鬼◯でいう所の上弦下弦?」
金光「まぁそうだね☆」

生徒会室の鍵を指で回して遊びながら金光が答える。ベテルギウスの連中(一等星)は基本的に人間に化けて生活しているから、会ったとしても気付きずらい。だが、不審だと思えば直ぐににげること、と石川からお小言と共に札を各々一基(札の単位は基)渡された。一等星でも、3秒程ならこの札で動きを封じられるそう。

佐久間「雑魚は即消滅だな」
椿月「結構凄いものなんだ…ただの紙切れにしか見えないけど、」
黒子「石川や清原の作る札は神様のお墨付きだからね」
魅麗「因みに…黒子は札つくれるの?強そうなの作れそうだけど…」
黒子「え、アタシ?無理無理!私、妖でもあるから札触ったりなんて下手したら死んじゃーう(笑)」

笑いながら手を振る黒子に冷ための視線を送る椿月を見て、なんだか少し安心した気がした叉優は、きちんと札をしまいこんだ。そして、ふと思ったことを口にする。

叉優「松井も…妖だったりする?」
石川・佐久間「!」
金光「!?」
黒子「…わぁお。」

叉優の文脈のない質問に、生徒会メンバーだけでなく魅麗達も目を見開いた。黒子に先程カミングアウトされるまで、周囲の人が人間ではないかもしれない、と考えて行動などしていなかったのに、叉優はわざわざ松井を指摘し、「神」ではなく、「妖」とまで言い切った。

黒子「あいつは、人間だよ。…まぁ、呪いがかかって、吸血鬼もどきってところかな」
楼成「すごい、なんで叉優分かって…」
石川「金光とか、言われて初めて気づいたのに…」
金光「鈍くてすみませんねぇ!」

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松井「…へっくし!!」
佐久間「手で覆えよ」

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石川「まぁ、今日のところはこれくらいで大丈夫だと思うよ。札も渡したし、基本イツメンの誰かと行動するでしょ?」
金光「危ない奴には近づかないこと!!」

時計に視線をやり、お開きにしようと言葉を放つ石川に、付け加える形で締めくくった金光。相変わらずソファにだらりと寝転び、小説をパラパラ捲る黒子はそのまま動く気はなさそうで、石川に引っ張られながら教室に帰った。

叉優(…ミカちゃん、大丈夫かな)


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多分続くぅ!
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