春が追い付く二拍手前。

エピローグ 或る小春日のこと

 彼女を見かけたのは、雲一つない、透き通るような、青い空の下だった。


 おそらく今生で最後になるだろう、氏神の(やしろ)への参詣の帰り道。
 花嫁行列の中、白無垢の美しい花嫁は、清々しい瞳で前を向き、夫となる男の手を取り、凛として歩いてゆく。
 私は、思わず足を止め、彼女を見ていた。


――そして、


 銀杏の葉が舞い散る風の中、この時期に咲くはずもない花の香りがした。
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