愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
第一章 愛のない結婚
 厳かで神秘的な空気を漂わせるチャペルには、今まさに愛を誓おうという男女の姿。彼らの親類縁者の他、彼らに近しい人間がそこへ列席し、その儀式を見守る中、牧師が決まり文句のそれを口にする。

「新郎清隆(きよたか)、あなたはここにいる(みやび)を、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」

 夫となるその男は少しも躊躇わずに「誓います」と答える。

「新婦雅、あなたはここにいる清隆を、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」

 雅は一拍だけ置いてから「誓います」と答えた。

 パフォーマンスであるそれに雅の良心は少しばかり痛むが、そんな雅には構わず式は進行していく。
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