彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「まぁ、なんて素敵なの!おばちゃん、もう泣いてしまいそう」

「ホント奇麗、ねえ、雅志さん」

「そうだな、美音ちゃん、おめでとう」

「ありがとうございます」

がっちゃんが、朝戸さんの腕から抜け出そうと、必死に私に向かって腕を伸ばす。

「みょんちゃん、みょんちゃん」

「こらこら、今日はレッスンじゃないんだ。美音ちゃんの膝には座れないぞ」

「雅昭は美音ちゃんのことが大好きだもんね。美音ちゃん、幸せになってね」

「はい、なります、幸せに」

それにしても、部屋に入って来てから、昭二おじさんは俯いたまま一言も声を発していない。どうしたのだろう……

「ねぇ、お父さん、さっきからずっと黙ってるけど、何か言ったら?」

梨香さんが昭二おじさんの顔を覗き込む。

「やだ、まだ泣くのは早いよ。ハンカチは?」

「忘れた」

「もう、ちょっとなんなの!」

「永峰社長、これをどうぞ」

沙織さんがスッティッシュの箱を昭二おじさんに手渡した。

「ありがとう、沙織さん」

沙織さんは何も言わず穏やかに微笑む。

「うぅぅぅ、、良かった。本当に良かった」

「昭二おじさん、いつも私を気にかけてくれて、お父さんみたいに見守ってくれて、ありがとうございます。私、ちゃんと幸せになります。これからも、よろしくお願いします」

「美音ちゃん……うわぁぁぁぁぁ」

ティッシュを渡してもらったにもかかわらず、滝のように流れる涙をスーツの袖でぬぐっている。

「あなた、ちょっとあなた、あらあら式の前からもうこんな」

「じぃじ、よしよし」

がっちゃんの小さな手が昭二おじさんの頭を撫で、撫でられた昭二おじさんは更に大泣きしてしまった。

「そろそろ時間ね、皆さん会場に移動しましょう。美音ちゃんも行きましょうか」

「はい」
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