また、会えたら
―あの頃の私へ
あの頃は、こんなにも人を好きになるなんて
思わなかった。こんなにも、心の底から
人を好きになったのは初めてやった。ほんと、私にとって
青春の1P・・・。


2022年 10月

「~~~~♪」
福岡県 黒崎市。黒崎駅で1人の女の子が、音楽を聴きながら、歩いていた。
椎名のん、21歳。優しくて、少し、いや、かなりの天然が入ってる女の子。福岡は、10月だけど、まだ、暑さが続いていた。のんは、好きな歌手の音楽を聴きながら、アルバイト先へ向かおうとしていた。のんは、この時は気づかなかった。‘片山’の気持ちに。のんは、大学4年の時、某うどん屋でアルバイトしていた。のんは、初めての仕事で慣れないことばかりだった。そして・・・・。1個下の少し不愛想な男の子、片山に出会った。のんはふと、片山に会いたくなり、スマホでLINEを開き、片山に電話をかけようと、着信のとこを押しそうになったが、やめた。のんは、自分自身で、片山への想いを、はっきり自覚していた。黒崎駅の周辺はたくさんの人が歩いていた。女子大生に、高校生、子供、小学生、主婦。それに親子連れ。のんは、なんだか、苦しい気持ちになった。なぜかというと、高校時代は悩んでばかりだったから・・・・・・・。

のんは、目的地のうどん屋に着いた。うどん屋の従業員の入り口に行った時、まさかの、
片山がいた。
「あ・・・・・・・片山」
「あ、うす」
白いシャツに、黒ズボンで、リュックを背負っている片山がそこにいた。すると、
「あ、俺、ちょい煙草吸うわ」
「ははは(笑)」
某うどん屋は、従業員の入り口の出たとこに、煙草を吸う場所があった。片山は、ポケットから、マールボロの煙草と、ライターを取りだし、椅子に座り、吸い始めた。‘煙草を吸う姿もかっこいいな’と内心、のんは思った。そして、のんは、片山の隣に、ちょこんと座った。
「・・・・・・片山」
「ん?」
片山は本当に、ワイルドな人だった。笑顔になっているところをあまり見たことがない。
のんは、片山に話した。
「うち、片山が羨ましいよ」
「何がよ(笑)」
「はっきり言いたいことがいえるとこ。」
「あっそ」
のんは目を細めて、ふと、空を見た。時間帯は夕方。福岡の空は本当に綺麗だった。のんが、空を見ている時、片山と少し手が触れ合った。のんが、‘ごめん’と言った時、片山が少し手を握ってきた。
「え・・・・?」
「・・・・・・・・・・・ごめん。俺、おかしいわ」
片山は、煙草を吸うのをやめると、中に入っていった。のんは、何が起こったのか分からない状況だった。空は茜色に染まり、マールボロの煙草の匂いが充満していた。のんは、片山の気持ちに気づいていたのかもしれない・・・・。片山が、自分のことを想ってくれていることに。

そして何時間か経った。バイト終わり、のんは、控室で少し寝ていた。すると、声がした。
「椎名、椎名」
「・・・・・・・・・・ん?」
ふと、声がした方を向くと、片山がそこにいた。のんは、寝ぼけていた。
「・・・・・何時?」
「10時半。皆帰ったばい(笑)」
「え・・・・・・・・・(笑)」
すると、片山と同い年の従業員の男の子、山崎が控室の扉からむくっと顔をだした。
「あ・・・・・・山さん」
「おつかれ~~~。てか、片山。がんば(笑)」
「ん?」
山崎は、そう言い、その場を後にした。片山を見ると、片山の頬が少し赤かった。
「帰るぞ」
「あ、うん」
のんと、片山もその場を後にした。

夜の黒崎は、車がたくさん通っていた。のんは、駅までの1本道を、片山と歩いた。片山から、煙草の匂いがした。お互い無言になった。のんは、片山の隣で歩くのは、少し緊張した。すると、片山が話し出した。
「椎名」
「ん?」
「お前って・・・・・・・・・・・好きな奴とかおらんの?」
のんは、片山の質問と全く同じことを聞いた。
「・・・・・・・・片山は?好きな人おる?」
すると、片山の頬が、ますます赤くなった。
「・・・・・・・・・・おらんわ、アホ」
「え、ほんま?」
すると、片山が、のんの目をじっと直視した。
「・・・・・・・・・・・綺麗になってくんなよ(ボソっ)」
片山は、早く歩き出した。のんの心臓の鼓動がうるさかった。のんは、片山の後ろ姿を、ただ、見る事しか出来なかった。のんは、でも、複雑な気持ちも抱いていた。のんは、来年の4月に、東京で就職することが決まっていた。片山と離れたくない、と思っても、離れてしまう運命だった。のんは、片山に恋をしていた。そして、片山も、のんに恋をしていた。あの頃の2人は、惹かれあっていた。お互いが素直になれずに、強がってばかりいた。

次の日の朝、のんは大学の友達の春と、博多で遊んでいた。のんは、博多のビルのスイーツのお店で、春に片山のことを話しだした。
「春ちゃん」
「ん?どした、のんちゃん」
のんは、マンゴージュースを1口、ズズッと飲んだ。
「私・・・・・・・・・・片山と離れたくない。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・のんちゃん、片山に告白したら?」
「・・・・・・・・・・・・・告白ねー」
のんは、パンケーキを食べる手を進めながら、片山の話を、春にした。春は、そんな、のんの話を、自分のことのように聞いてくれた。のんは、‘片山に告白しよう’と心の中で決心をした。

時間は過ぎ、その日の夜、のんはアパートの部屋で、パニック発作を起こした。
「はー。はー、はーはー・・・・・。」
のんは、昔のことを思い出し、そして、パニック発作を起こした。のんは、精神疾患で、パニック障害という病気を抱えていた。のんは気持ちを落ち着かせようと、水を飲み、頓服の薬を飲んだ。
「はー・・・・・いや・・・・」
のんは、そのまま、アパートの壁にもたれた。きっかけは、突然インスタのDMで、高校時代に虐めてきた人からDMが来たことによることだった。

‘元気―?’

のんは、高校時代、
・きもい
・変な子
・しろちくび
・可愛くないよね
・頭悪い
・くさー、ファブリーズかけたろか

による、言葉の虐めにあった。のんは、深く傷つき、そして、高校3年の冬に、‘パニック障害’と診断された。のんは、診断を受けてから4年経ち、病気も治ってきたが、不安な気持ちは、いつまで経っても、おさまらなかった。のんは、少し息切れをしながら、ベットで横になった。

のんは、その日夢をみた。

―椎名、無理すんなー
―なんで?
―椎名は、いいとこがたくさんあるよ
ーあ、うん・・・・・・。
―・・・・・・・とりあえず、無理すんな

のんは、夢の中で、片山と話をした。そして、次の日の朝、のんは、神社に行った。そして、神社の絵馬に、こう記した。
‘パニック障害が治りますように。そして、片山の幸せが私の幸せです。片山、幸せでいてください’

のんは神社の絵馬に、そう記し、そして、お参りもした。

―ぱん、ぱん、ぱん

のんは、3回両手を叩き、片山の幸せを願った。のんは、その後、片山と別れ、東京に上京した。のんは、日々の生活に一生懸命だった。のんは、東京で暮らしている中で、片山にもう一度会いたい、そう強く想った。‘会いたい’。ただ、それだけだった・・・・・・。

(END)

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