セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~

16歳 〜お宅訪問をしよう〜


 5月末。

 先日のパーティで話に出た、杵築の自宅を訪問する日がやってきた。その後の話し合いにより結局、我々、生徒会2年のメンバー全員で、お邪魔することになったのだ。

 この日の訪問に、私が選んだのは、上品なワンピース。
 手土産は、母と、母付きの使用人である古賀さんが、「これなら間違いない」と勧めるお店のスイーツにした。


 杵築の家に到着すると、一等地にあるのに何と広い敷地! 

 敷地内にあるお洒落な遊歩道を見て、愛花ちゃんは驚いていた。黒瀬の家も大きいけれど、ここまでではない。


 杵築によると、門から家に入るまで距離があるのは面倒だけれど、羽村の家よりはマシだという。

 羽村の家は、駅前の超高級マンションの最上階にあるところ。セキュリティが厳しすぎて、エントランスから、家に着くまでが大変面倒なのだとか。

「3箇所でインターフォンを鳴らして、さらに、15階の受付でコンシェルジュを通さないと、先のエリアに入れない。
 面倒にもほどがある。」

「居住者は、キーを持っているだけでドアが開きますから、そこまで面倒ではないんですよ。」

 弁明する羽村に、愛花ちゃんは憧れの目を向けていたけれど。私がまず思ったのは、『忘れ物をしたら大変そうだな』という点だった。


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