セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~

16歳 〜学校の外に出かけよう〜


 6月の終わり。

 王明学園の2年生は、街頭募金をはじめとする各種ボランティアのどれか一つを選んで、「ボランティア体験」を行うことになっている。
 私は、乳児院に行くボランティアを選択した。


 当日、私が他の生徒数名と共に訪問したのは、カトリック系の乳児院だ。
 私達が任されたのは、午後のひととき、乳児院にいる子ども達と遊ぶこと。

 「乳児」院とはいうものの、私達が訪問した乳児院には、就学前の「幼児」もたくさんいた。日中だけ預けられている子どもも、いるらしい。


 子ども達の集まっている部屋に入り、誰に話しかけようかとキョロキョロしていると。
 子ども達は、私を遠巻きにするように、ささーっと離れて行った。

 一緒にボランティアにきた他の生徒たちは、すぐに子ども達と遊び始めているのに、私のところには、誰一人、寄って来てくれない。


「絵をかいてるの?」

 私が小さな男の子に話しかけると、男の子は私の顔を見るやいなや、「うわあー」と泣き始めてしまった。
 
――わ、わたし、別に虐めてないんだけど?

 オロオロしていると、シスターが慌てて駆け寄ってきた。


 その後も、「お姉ちゃん、顔こわい。」とストレートに言ってくる子どももいて。
 私は、傷心の思いで、部屋の外に出た。

 庭の方にも、遊んでいる子どもがいるのだ。そちらの方なら、溶け込めるだろうか。

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