セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
 青石さんの演舞が始まった。

 制定居合の後に、古流の演舞。抜刀する様はあまりにカッコよく、美しくて、私はすっかりファンになってしまった。


「カッコいい……。居合道部、入ろうかな。」

 王明大学に入るかどうかも決まっていないのに、私はその気になってきた。

「いいよねえ。あ、そうだ。居合をやってると、二の腕が太くなるらしいよ。」

 え。それはちょっと、嫌かもしれない……。


 私と仲田くんは、先輩にあたる青石さんにちょっと挨拶をしてから、体験を終えた。


 私は家に帰ってからも、青石さんの素敵な姿を思い返しては、「あー、すてきだったー」と枕を抱きしめ、ゴロゴロと転げまわった。
 もしや、これが恋というものだろうか。


――私に彼氏ができたら、それだけで、悪役ルートは回避できる気がするのに。

 高等科にいる限り、接点のない青石さんと会う機会は、ほぼないだろう。
< 175 / 615 >

この作品をシェア

pagetop