セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
※※※※


 その後、パラパラと『ファンブック』を見ていた佐々木くんが、ふと口にした。

「――黒瀬さん。誕生日、3月30日なんだ。」


「うん、そう。春休み中だから、誰にも祝ってもらえなくて。」
 いつも寂しい思いをしているのだ。

 とはいえ、学期中であれば誰かに祝ってもらえるという保証もない。
 むしろ、『春休みだから、仕方ない』と納得できる理由があるだけ、幸せなのかもしれない。


「――と、いうことは。
 あなたは、私より年下ということですか。」 
 羽村が、指で眼鏡を上げた。

「同学年でも、一番年下か。」
「たぶん、そうですね〜。」
 31日か、4月1日生まれがいれば、別だけれども。


「……。」

 ――?

 よく分からない沈黙を破ったのは、三杉だった。


「あー、バカバカし。
 ――アホなこと言ってないで、帰るわ。」

 三杉はテーブルに手を着きながら立ち上がると、勝手に話を打ち切った。
 

 柳瀬くんに悪意がないのが分かったからだろう、その後の生徒会室は、いつもどおりの雰囲気だ。

 これで、一応、一段落。
 柳瀬さんも安心することだろう。 
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