セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
「あ、あなたという人は。
 そんな破廉恥な格好で授業を受けるつもりですか! 黒瀬家の令嬢が、一体何を考えているんですか。」

「え……、いや、そこまでじゃ……。」

 朝から説教をしてくる羽村の衣装は、ドラキュラ。
 私よりもっと、きわどい衣装の子はいっぱいいたぞ。羽村はクラスに行ったら、卒倒するんじゃなかろうか。


「黒瀬さん、かわいい……。」

 ストレートに褒めてくれる佐々木くんは、刀を腰に下げた浪人風の衣装。
 着物を着崩して胸元を大きくあけているので、ただでさえ溢れている色気が、だだ漏れである。


「そのしっぽ、どうなってんの?」

 近付いてしっぽに手を伸ばしてきた三杉は、パイレーツ・オブ・何とかという映画でみるような、海賊だ。
 かなり作りの良い衣装で、まるで映画俳優のように見える。


「てか、しっぽを掴むな!」

 私は、三杉の手を振り払った。

「女性のしっぽを掴むなんて、あなた、変態ですか。」
「いや、しっぽは作り物だろ。意味分かんねーよ。」

 羽村と三杉が、ああだこうだと、しっぽ談義をしているうちに、予鈴が鳴ってしまった。
 私たちは慌てて、その日の予定を最終確認すると、各々のクラスへ戻った。
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