セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
4歳 〜芸は身を助ける〜
4歳の春、私は年中クラスに進級した。
今年度も、杵築裕也とは別クラスだ。
うちの幼稚園では、年中から年長に上がる際はクラス替えがないので、幼稚園の間はずっと別クラスということが確定した。
触らぬ神に祟りなし。
年中になって変わることは、幼稚園での「クラブ活動」や「習い事」が始まることだ。
同級生の幼児の中には、親に決められたものを、やる気なくやっている者も多いけれど、その中にあって私は人一倍、張り切っていた。
思い出すのは、ゲームの中の、いちエピソード。
悪役である黒瀬百佳が、高等科での音楽の授業中、ピアノが不得意なヒロインを、笑い者にするシーンがある。
けれど、その百佳とて、けして上手い方ではなかった。中途半端なレベルの芸事で偉そうに振る舞う、恥ずかしい悪役令嬢。
――あんな風には、なりたくない!