セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~

16歳 〜お見合いをしよう〜


 翌週の日曜日。

 私は少しばかり緊張しながら、初めてのお見合いに出かけた。父は仕事だったはずなのに、結局、両親とも一緒に来てくれのだ。

 黒瀬グループにもホテルがあるにもかかわらず、この度のお見合いは、あえて全く関係のないホテルのエグゼクティブラウンジを貸し切って行うと聞いた。

 相手の家に配慮してのことだろう。


「翔さんは、大変優秀で、中等科でも高等科でも生徒会長を務められておられたとか。医学部にもトップ入学を果たされて、さすがは大病院の跡取りと……。」

「百佳さんは、お美しいだけでなく、学年トップクラスの成績。芸術への造詣も深く、ピアノもバイオリンもお上手だとか……。」


 仲人による互いの紹介、という名の賛辞だけで、延々、数十分もかかった。

 相手はどうなのか知らないけれど、私の方は「それ、誰のことですか。」というくらい盛りに盛った美辞麗句で、むず痒いことこの上ない。
 もう勘弁して下さい、という言葉が喉まで出かかった。
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