セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
17歳 〜船上花火鑑賞をしよう〜
神戸から帰って一息つくと、今度は、杵築に招待された、花火クルーズだ。
今回は、春名さんに相談しながら、品の良いパンツスタイルを選んだ。船に乗るのであれば、動きやすい格好が良いと勧められたためである。
「ご招待ありがとうございます。」
私は杵築とそのご両親に挨拶をしてから、生徒会メンバーが固まっているテーブルへと向かった。
――おお、可愛い!
愛花ちゃんはピンクの浴衣で来ていた。花火大会を意識してのことだろう。とても可愛らしく、似合っている。
これなら、杵築の婚約者候補がどんなに可愛くても、ちょっと敵わないだろうと思っていたのだけれど。
「はじめまして。」
白鴎紗和子(はくおうさわこ)さんは、目をみはるような美しさの、大和撫子だった。
――超、可愛い!!
何だなんだこれは。愛花ちゃんといい、紗和子さんといい、可愛さのインフレ状態である。
こんな天使二人が杵築一人を取り合うなんて、やはりここは、紛れもなくゲームの世界だ。
紗和子さんは落ち着いた洋装で、溢れんばかりの品の良さ。
もちろん、愛花ちゃんの浴衣も可愛いけれど、こうして紗和子さんを前にしてみると――、船の上で一人浴衣姿なのは、若干、違和感がある。
しかも愛花ちゃんが着ているものは、良い物を見慣れている人からは、生地的に安っぽく見えてしまうだろう。