セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ～能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない～

　私が近寄っていくと、詰め寄られていたのは、予想どおり、愛花ちゃんだった。

　愛花ちゃんは、少し俯いて、震えながら泣いているように見える。　

　責め立てている側は、ゲームの中で、百佳の取り巻きだったと思われる三人組。今は、杵築のファンクラブを自称しているはずだ。


　愛花ちゃんに近付いた一人が、手にハサミを持っていることに気付いて、私はハッとした。

　同時に、愛花ちゃんもハサミに気が付いたのか、弾かれたように顔をあげた。その目に涙はない。


「ちょっと。それ、どうするつもりよ？」

　愛花ちゃんは、先ほどの弱弱しさが嘘のような、強い瞳で三人組を睨みつけて言った。