セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
「仲悪いんですか?」
「あいつは昔から、僕に嫌がらせをするのが趣味だから。気に入ってる物に限って、壊されたり、取られたり。」

 ああ、おもちゃの取り合いとか、子どもは根に持つよなあ。


「そういうことはやめるようにって、私からやんわり言ってみましょうか?」
「やめて。逆効果になるかもしれないし。」

――逆効果?


「あいつは、嫌がらせにかけての嗅覚が、ホントすごいから。」
「へ~、嗅覚……。」

 青石兄は医学部の学生なのに、言うことが何だか感覚的だ。

 羽村の家に行くのを危険視したり、コーディネーター云々と疑ったり、挙げ句に青石さんが嫌がらせしてくるとか、ちょっと疑心暗鬼になり過ぎているのではなかろうか。

――いつか、友人として、指摘してあげた方がいいかもな……。


 そろそろ、迎えの車がくる時間だったので。私は、春名さんから預かったお菓子を青石兄に渡して、改めてお礼を伝えた。

 青石兄は、もう1杯コーヒーを飲んでから帰るということだ。
< 540 / 615 >

この作品をシェア

pagetop