セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
次に、あからさまなのは、羽村くん。
彼女は、羽村くんが小姑みたいに煩い、お説教キャラだと思っているけれど。
羽村くんが気にするのは、彼女だけですから!
他の女子にはお説教なんて、していませんから!
なのに彼女ときたら、本当に全然、気付いていない。
夏合宿のとき、『黒瀬さんとボートに乗る券』『黒瀬さんに勉強を見てもらう券』を取ろうとした男子がいたらしいけれど。
羽村くんがすごい迫力で睨みつけ、有無を言わさず景品の『お菓子』の方を渡していたということも、瞳ちゃんから聞いている。
羽村くんのマンションに行ったとき、彼女はのん気に『今どきのマンションはすごい~』と言いつつ、防音の話や、脱走防止の鍵の話もしていたけれど。
――それ、監禁仕様じゃないですか?
喉まで出かかった言葉を、私は飲み込んでいる。羽村くんの目が、『余計なことを言わないで下さいね』と言っている気がしたからだ。