恋神様に願いを込めて
「ゆ、夢…?」


「ははっ、なんで。現実だよ。俺は紬ちゃんが好きだよ」


「な…っ、だって私、全然先輩と釣り合ってないし…」


「釣り合わないって何?気持ちが同じならそれでよくない?もし紬ちゃんに何かするような人がいたら、その時は俺が守るから。安心してよ」



にこっと優しい笑顔が私にだけ向けられていて、不覚にもどきりとしてしまう。



「私…これからもロイ様のことで熱くなって、たくさん先輩のこと困らせちゃうかも…」


「そんなの全然困らないよ。そこも含めて俺は紬ちゃんが好きだし。…紬ちゃんは、俺が推しのままでいいの?」


「それは…嫌です。推しだと先輩と付き合えないもん…」


「うっ、ずるい…」


「え」



突然先輩がぎゅーと抱きしめてきた。


先輩の温もりと石鹸の匂いに、心臓が爆発しそうだ。



「じゃあ俺と、付き合ってくれますか?」


「…っ、はい!」



好きになったら、推しなんかのままじゃいられない。


独り占めしたくなるのも醜い気持ちばかり出てきてしまうのも、全部恋をしているから。


これからは先輩のことを推しとしてじゃなくて、一人の男の子として大好きの気持ちを伝えていこう。



先輩の隣に堂々といたいから、もう自分の気持ちに嘘はつかない。


今の私は、嫌いじゃない。
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