恋神様に願いを込めて
「今日もツンデレ炸裂だね。そんなとこも可愛いよ」


「うるさい、本当にあっち行ってよ」



幸い、私は気持ちを素直に伝えることが苦手なため、そんな素振りを一切こいつに見せていないということが唯一の救いだ。


もし万が一気持ちを伝えてしまったら、今の関係が崩れてしまうような気がして怖い。



…そもそも「好き」なんて言える気もしないけど。



「ねえ聞いた?充希先輩付き合っちゃったんだってー」


「聞いた聞いた!しかも隣のクラスの桜庭さんでしょ?充希先輩がかなりのベタ惚れらしいよね。桜庭さんに手出す女子いたら容赦しないって牽制してるんだって」


「えーみんなの王子様だったのに…。絶対恋神様の力とかでしょ」


「でもあれってただの噂でしょ?まあ桜庭さんみたいな人は神頼みとかしないと、あんな王子様ゲットできないかもね」



ばんっと机を叩くと、前に座っていた女子二人組がびくっと肩を揺らしてこちらを振り向いてきた。



「ねえ、陰でコソコソ言ってて恥ずかしくないの?どうせあんたたちって、勝負にも出ないような負け犬でしょ?気分悪いから別のとこでやってよ」


「な…っ!」


「本当、性格わるっ!」



女子二人組は気まずそうに教室を出て行った。



「結芽花ちゃん優しいね」
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