Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
ドクンッ!
今、音、聞こえたよね。
もしかして、もう着いたの?
知らない間に時間が経ってたようだと知り、早鐘を打つ心臓を押さえて、息を殺す。
キィ、と板が軋む音が聞こえて、上がり框に体重がかかった音だと気づく。
あそこはいつも、軋むんだ。
コツ、コツ、板敷きの廊下を歩く、微かな足音。
靴を脱がずに、そのまま上がって来たらしい。
間違いない、Xだ。
震える手でアルバムを置き、カバンを探る。
焦りからか、なかなか目当ての物が手に触れない。
早く、
早く!
泣きそうになりながら手を動かして――そして、汗にまみれた手がようやくトウガラシスプレーを探し当てた時。
和室の入口に、長身の男が姿を現した。
「ひっ……!」