Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

ドクンッ!



今、音、聞こえたよね。
もしかして、もう着いたの?

知らない間に時間が経ってたようだと知り、早鐘を打つ心臓を押さえて、息を殺す。


キィ、と板が軋む音が聞こえて、上がり框に体重がかかった音だと気づく。
あそこはいつも、軋むんだ。


コツ、コツ、板敷きの廊下を歩く、微かな足音。
靴を脱がずに、そのまま上がって来たらしい。

間違いない、Xだ。


震える手でアルバムを置き、カバンを探る。


焦りからか、なかなか目当ての物が手に触れない。

早く、
早く!

泣きそうになりながら手を動かして――そして、汗にまみれた手がようやくトウガラシスプレーを探し当てた時。


和室の入口に、長身の男が姿を現した。


「ひっ……!」


< 312 / 402 >

この作品をシェア

pagetop