Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
4. かみ合わない夫婦

「……どうした茉莉花?」

「へっ?」

物思いから覚めて顔を跳ね上げると、リビングのソファから怪訝そうなクロードさんがこっちを見ていた。

リビングダイニング、と一括りにできる空間とはいえ、パーティーが開けそうなこの広さだ。
アイランドキッチンで作り置きのおかずを準備している私の所からは、結構な距離があるのに、視力のいい彼は私の手が止まっていることに気づいていたらしい。

「い、いえっなんでも……」

慌てた私は急ごしらえの微笑を貼り付けて、なんとかマリネ液作りに集中しようとした。
けど――

「茉莉花、こっちへ」

抗うことを許さない低音に、再び手が止まる。
ため息が漏れた。

のろのろと手を洗い、エプロンを外してから、クロードさんがくつろぐリビングへと向かう。

夕食後、珍しく自室へ戻らずリビングで仕事を始めたなと思ってたら、どうやら最初からこれが目的だったみたい。
無理もないか。
自分でもこの1週間はかなり挙動不審だったなって自覚があるから。

せっかくかみ合い始めていた夫婦の会話や、何気ない視線のやりとりも、すっかり最初の頃に逆戻りしてしまったし……。


「座れ」

命じられるまま、おずおずと隣へ腰を下ろす。
(隣といっても、海外サイズのワイドなソファのため、間には2人分ほどの空間が空いている)

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