青い海に揺らぐ

2学期も終わりが近づいて、冬休みに入ろうかという頃。


初めて言い返したあの日以降、呼び出しの数は少なくなったような気がする。


それでもどこか安心できないのは、ひとえににっこりと笑顔を浮かべたマリアちゃんが怖いからだ。


だってあの場にいなかったマリアちゃんの耳にも確実に入っているはずなのに、何も言われることなく、周りの子達も大人しかった。


嵐の前の静けさじゃないけれど、どこか漠然とした不安に駆られるのも仕方のないことだろう。


深海シリーズはまだ1冊目の半分ほどしか進んでおらず、今日もまた続きを読もうと図書室へと行こうとしていた時だった。



「綾瀬美紅ちゃん、だよね?」


突然かけられた声に振り向けば、そこにはにっこりと笑う男の人がいて。


「……はい、そうですけど」


見たことないから多分先輩なんだろうけど、全く面識がないのに名前を知られてることに少しだけ警戒してしまう。


「あ、ごめんごめん。怖がらないで。美紅ちゃん、有名人だからさ」


そう言って笑う先輩が誰なのかもわからず、でもよくよく見れば整った顔をしていることだけはわかった。


「はぁ、そうですか」


でもなんで話しかけられたのかは全然わからない。

何も用がないならさっさと解放してほしいけど、先輩という立場のせいでそれも出来そうになかった。


「ちょっと話があるんだけど、ここじゃなんだしさ」


さっきとは違いひっそりと落とした声に、あぁ告白かと思い当たる。


最近では同級生だけでなく、違う学年の人からも告白されることが増えていた。


屋上でいいよね?と聞く先輩に頷いて、静かにその後ろをついていく。


そろそろ本の期限が過ぎるから、これが終わったら一旦返して、また借りよう。

せめて一冊くらい、冬休みまでには読み終わりたかった。

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