処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜
 だがそんな嵐も過ぎ、私の熱も引いて、体調も万全になった。
 リークは、畑に敷いてあったシートを取る。野菜は全て無事のようだ。

「良かった…」

 ほっと一息ついて、胸を押さえながら安堵の表情を浮かべるリークを見て、私も良かった。と口にしたのだった。

「ああ、良かったよ。早めにシートを敷いて良かった」
「そうね、それに嵐も早めに過ぎ去って良かったわ」

 私とリークがシートを折り畳んでいた時だった。どこからかメイルの声が聞こえてくる。

「皆!」
「メイルさん?!」

 メイルの顔は汗が浮かんでいる。更に何かに追われているような、焦燥感が漂っている。
 何かあったのだろうか。途端に嫌な予感が胸の内で湯水のように湧いて出てくる。

「メイルさん、何かありました?」

 と、私が聞くと、ええ、そうよ。とメイルが答える。

「これを読みなさい」

 メイルが1枚の紙を私とリークに差し出す。その右下には皇帝キムの印が押されてある。
 となると、皇帝直々の令状か。

「避難令…?」
「ナターシャ、ここから避難しろって書いてあるぞ」 
「そうね…」

 避難令。簡潔に言うとこの地は戦争に巻き込まれるので早くここから避難・疎開しろという指示だ。

(もうそこまで酷い事になっているのか…!)

 頭の中がぐるぐると回る。早く避難しなければという意見に、どこに避難するのか?という意見に更にここから離れたくない、家はどうするのか?という意見らが次々と目まぐるしく、頭の中で回っていく。

「リーク?」

 リークの顔は青ざめていた。彼もやはり不安に苛まれているのだろう。そんなリークは震えながら口を開く。

「避難するにしてもどこに避難するんだ、それに親も…」
「リーク…」
「この家を、置いていくのは…」
「家なら大丈夫よ」

 と、メイルが力強く言った。

「家なら魔法で持ち運び出来るようにするわ。水鏡もね」
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